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テレワークはどうやって導入するか3 ~新型肺炎対策~

(テレワークはどうやって導入するか1 ~新型肺炎対策~)【続き】
 
Q 当社は、最近の新型肺炎(コロナウィルス)の感染拡大を踏まえて、在宅勤務等のテレワークを実施せざるを得ないと思っています。
また、これを契機に、採用力の増強・離職防止等の観点から、恒常的な制度として、テレワーク制度を導入することも検討しています。
そこで、テレワークの実施に際して、就業規則上の整備等、必要な手続を教えてください。

A テレワークの実施に際して、就業規則の変更等は必須ではありません。
ただし、従業員に通信費用等の負担をさせるのであれば、その旨の就業規則の改訂が必要となります(労基法89条)。また、実際には、費用負担のほか、テレワークの対象者とテレワークを認める基準、その手続に関する事項、テレワーク勤務中の遵守事項、テレワーク期間中の労働時間の設定と管理に関して、規則を設けた方がよいでしょう。

テレワーク導入のための3つの事項

テレワーク導入のためには次の3つの事項を遵守する必要があります。

  1. 人事・労務に関するルール作り 現行の就業規則を基礎として新しくテレワークによる働き方のルールを定めます。
    テレワーク実施者がテレワークを通じてでも適切な労働環境で働けるようにルールを整備することです。
  2. ICT(情報通信技術)環境を作る
    ICTの現状とテレワーク導入の目的に合わせて、ICT環境を整えます。
    テレワーク実施者が勤務場所を離れても、より安全で快適なシステム環境で働けるようにICTのシステムやツールを選択、導入することです。
  3. セキュリティ対策を実施する
    選択したICTの環境に合わせて、 セキュリティ対策を整えます。

人事・労務に関するルール作り

テレワークを導入するにあたっては、まず人事・労務に関するルール作りをしていくことが肝要です。

そのため、テレワークと労働基準法との関連を説明していきます。

労働条件の明示

事業主は労働契約締結に際し、就業の場所を明示する必要があります(労働基準法施行規則5条2項)。

在宅勤務の場合には、就業場所として従業員の自宅を明示する必要があります。

労働時間の把握

使用者は、労働時間を適正に管理するため、従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、 これを記録しなければなりません(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準・平成13.4.6 基発第339号)。

それでは、テレワークの対象社員に対してどのように労働時間を把握すればよいでしょうか。

労働時間の管理には、①始業・終業時刻の管理と ②業務時間中の在席確認の2つの観点があります。

①始業・終業時刻の管理

従業員の始業・終業時刻を管理するため、始業・終業時刻の報告や記録の方法をあらかじめ決めておきます。

【報告の方法(例)】

  • Eメール
    テレワーク実施企業で、最も多く利用されています。 使い慣れている、業務の報告を同時に行いやすい、担当部署も一括で記録を共有できるなどの特徴があります。
  • 電話
    使い慣れている、時間がかからない、コミュニケーションの時間が取れるなどの特徴があります。
  • 勤怠管理ツール(始業・終業時刻等を管理することができるシステム)
    出退勤の管理ができるツールを活用して、テレワーク時の始業・終業時刻などを管理します。Eメールで通知しなくてもよい、大人数を管理しやすい、担当部署も記録を共有できるなどの特徴があります。
  • 業務中に常時通信可能な状態にする
    個別に報告する手間がかからないなどの特徴があります。

【業務を中断する場合】

所定労働時間中に業務を中断することを認める場合について、その運用ルールをあらかじめ決めることが必要です。
特に、育児・介護を行っているテレワーク利用者は、個人のやむを得ない事情によって業務を中断する必要が生じる可能性がありますが、労働時間管理や情報共有に関するルール化が求められます。

②在籍・離席確認

在席・離席が確認されることによって、「勤怠の管理が難しい」という管理者の不安や、「テレワーク時に仕事をさぼっていると思われていないか」「評価が下がるのではないか」というテレワーク利用者である従業員の不安が軽減できます。

また、始業・終業時刻の確認のほかに、労働時間中に適正に業務が行われているかを管理することが必要な場合もあります。

その場合、例えば、Eメールや労務管理ツールなどによって、在籍・離席状況を確認することができます。

例えば、子どもの送迎などによって業務を中断する場合は、その都度、労務管理ツールなどを操作するというルールの確立が必要です。

また、労働時間(在席)中は常に電話連絡ができる状態とすること、テレワークのパソコン作業の画面が閲覧できるなどの方法もあります。

どのような方法にするかは、労使でよく話し合って決めることが必要です。

業績評価・人事管理等の取扱い

業績評価や人事管理について、会社へ出社する従業員と異なる制度を用いるのであれば、その取扱い内容を丁寧に説明しておく必要があります。また、この場合には就業規則の変更手続が必要となります(労働基準法89条2号)。

通信費・情報通信機器等の費用負担

テレワークに関わる費用負担区分については、テレワークを導入する前に、通信費・水道光熱費など負担について明確なルールをつくり、従業員に対して、丁寧に説明することが必要です。

労働基準法第89条第1項第5号では、「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項を就業規則に定めなければならない。」と規定されていますので、必要に応じて就業規則の変更をしなければなりません。

もちろん、就業規則に規定がなくても労働者との個別の合意でこういう取決めをすることはできますので、必ずしも就業規則の規定にないから労働者に負担させられないということではありません。

ただし、労働者との間のトラブル防止という観点からは、事前に明確にどの範囲で会社が負担し、どの範囲で従業員が会社にその費用の負担を請求できるのかというところは明示しておく方がよいでしょう。

テレワークの導入によって、費用が発生する例としては次のようなものが考えられます。

  • 情報通信機器の費用 テレワーク導入企業の事例では、PC 本体や周辺機器、携帯電話、スマートフォンなどについては、会社から貸与しているケースが多くみられます。
  • 通信回線費用 モバイルワークでは携帯電話やノート型PCを会社から貸与し、無線LAN等の通信費用も会社負担としているケースが考えられます。 一方、在宅勤務では、自宅内のブロードバンド回線の工事費、基本料金、通信回線使用料等が発生します。
  • 文具、備品、宅配便等の費用 文具消耗品については会社が購入した文具消耗品を使用することが多いでしょう。
    切手や宅配メール便等は事前に配布できるものはテレワーク実施者に渡しておき、会社宛の宅配便は着払いにするなどの対応ができます。
    やむを得ずテレワーク実施者が文具消耗品の購入や宅配メール便の料金を一時立て替えることも考えられますので、この際の精算方法等もルール化しておくことが必要です。
  • 水道光熱費
    自宅の電話料金や水道光熱貲について自己使用分と業務使用分か請求明細などにより区分可能であればその実額を精算することができますが、不明な場合は、使用頻度などを考慮して従業員と話し合い、定額の手当(在宅勤務手当等)として支給する方法があります。ただし、在宅勤務手当の支給額については各社様々ですが、週1~2回の頻度で在宅勤務を行う場合、水道光熱費については特に支払っていないとする会社がほとんどです。水道光熱費のみであれば1日数百円程度であることが多いので負担としても多くはないと思われます。

その他

在宅勤務を行う頻度が高い社員には、通勤手当の削減分を在宅勤務手当に充てるなどの方法が採られることもあります。

その目安として、通勤定期代との兼合いから「週3日以上テレワークをする(通勤しない)場合」と定めている企業が多いようです。

社内教育の取扱い

在宅勤務等を行う労働者について、社内教育や研修制度に関する定めをする場合にも、当該事項について就業規則に規定することがよいでしょう。

テレワークモデル就業規則(在宅勤務規程)

厚生労働省において、テレワークモデル就業規則を公表していますので、ご参照ください。

ICT(情報通信技術)環境の構築

テレワーク導入のためのICT環境の構築には、主に4つの方式があります。

リモートデスクトップ方式

オフィスに設置されたPCのデスクトップ環境を、オフィスの外で用いるPCやタブレット端末などで遠隔から閲覧及び操作することができるシステムです。

 
特徴 手元にある端末のディスプレイ上に、オフィスに設置された端末のデスクトップを表示したウィンドウを開いて見る形になる。これは、オフィスで行っていた業務をそのまま引き続いて自宅で作業できるメリットがある。しかし、リモートで見ているデスクトップの表示サイズに表示が依存し、見にくくなる場合がある。また、回線速度によっては動作が重くなる懸念がある。
セキュリティ 作業は遠隔操作で実施する。そのため、全ての作業がオフィスの端末で行っている状態と同じで、手元の端末にデータは残らない。また、保存したファイルはオフィスにある端末上に保存される。情報漏えいが起きにくいメリットがある。
導入条件 新しくシステムを組み込む必要はなく、オフィスに設置された端末がインターネットにつながっていれば、専用アプリケーションや専用機器(認証キーなど)を介してシステムが利用できる。
導入端末 シンクライアント型PC・BYOD PC
コスト 認証キーの購入などで対応でき、システム構成を大きく変えずに済むため、比較的安価な導入が可能。
留意点 リモートデスクトップを利用するには、オフィスに端末を用意し、常時電源をオンにしておく必要がある。そのためにオフィスの電気代に負担がかかり、リモートデスクトップの利用人数を増やす場合はコストが増大するおそれがある。この問題を解決する方法として、クラウド技術と組み合わせてオフィスにある端末の電源オン・オフを遠隔から自在に操作可能な技術がある。

仮想デスクトップ方式

オフィスに設置されているサーバから提供される仮想デスクトップに、手元にあるPCから遠隔でログインして利用するシステムです。リモートデスクトップ方式との違いは、サーバにアクセスして利用する点です。

 
特徴 手元の端末で、直接作業しているのと変わらない。ただし、作業のしやすさは回線速度に依存。
セキュリティ 作業した内容はサーバに保存され、手元の端末には残らない。また、仮想デスクトップ利用者が 自由にソフトウェアをインストールするのを防止することができ、OSのアップデートなどは管理者から実行可能。
導入条件 オフィス内に、仮想デスクトップを管理するサーバやVPN装置などの設置が必要になる。また、 社外専用端末にVPNソフトをインストールすることが必要。
導入端末 シンクライアント型PC・BYOD PC
コスト 専用サーバや装置を設置する初期コストがかかる。
留意点 仮想デスクトップでは導入したサーバのリソースを配分して利用するため、グラフィックを頻繁に用いるなどのマシンパワーを要する専門職(設計職、デザイン職など)が利用することは不向きである。

クラウド型アプリ方式

オフィス内外や利用端末の場所を問わず、Web上からクラウド型アプリにアクセスし、どこからでも同じ環境で作業ができます。従来のSaaSやASPと呼ばれていたサービスに近いものですが、必要なアプリケーション(機能)が、企業のコンピュータや専用サーバ上ではなく、クラウドサーバ上にあるという点で異なります。

 
特徴 あらゆる場所でどの端末を利用しても同じインターネット上の環境で作業することになる。アプリケーションで作業したデータはクラウド上に保存されるので、非常時にオフィス内の端末が使用できなくなった場合でも、他の端末からクラウドにアクセスしてデータを参照できる(BCPに役立つ)。
セキュリティ 従業員の手元の端末からオフィス内の既存のサーバに直接はアクセスできない仕組みである。アプリケーションによっては、クラウド上で作成した資料をローカル環境にダウンロードすることが可能である。
導入条件 既存の社内システムに新しくシステムを組み込む必要はなく、オフィスに設置された端末がインターネットにつながっていれば、アプリケーションに対してアクセス可能なライセンスや認証を取得するだけで利用可能である。
導入端末 端末は問わない。
コスト 設備コストがほとんどかからない。また、資料などをクラウドで保管共有するため、物理的なサーバの用意が不要である。アプリケーションは月額や利用実績に応じる従量課金、無償の場合もある。
留意点 アプリケーション利用のためのライセンスについて、契約によっては1年毎に更新をする必要がある。また、利用するPCはWebブラウザを利用する結果メモリを消費するため、マシンリソースがある程度要求されることになる。

会社PCの持ち帰り方式

会社で使用しているPCを社外に持ち出し、主にVPN経由で業務を行う方式です。実際に採用する場合は、企業から従業員に対して、情報漏えい対策などの十分なセキュリティ確保のほか、私的利用の制限などの技術的な機能制限をしておく必要があります。

 
特徴 オフィス内外に関わらず、通常業務に利用しているPCを用いる。そのため、従業員は使い慣れた端末で作業を進めることが可能。
セキュリティ PCに業務データの多くが格納された状態で社外へ持ち出すことになるため、PCの盗難や紛失による情報漏えいが発生するおそれがある。そのため、企業側からテレワーク専用のPCを貸与する場合は、十分なセキュリティ対策がなされたものを用意することが必要。例えばHDDの暗号化、外部メディア接続の制限、多重認証や生体認証等の複雑な認証要求、シンクライアントPCを採用するといった利用機能の制限、のぞき見防止フィルターの利用など。
導入条件 システムの導入条件はないが、オフィス外へ持ち出すPC自体のセキュリティ対策を十分に行うこと、従業員がセキュリティポリシーを十分に理解して遵守することが要求される。
導入端末 端末は問わないが、オフィス内のセキュリティが確保された環境から外れるため、常に端末そのものに十分なセキュリティ対策を講じていることが求められる。
コスト 他の方式はオフィスに設けられた個人の端末以外のコストを必要とするが、オフィス内外のPCを1台にするため、他の方式よりもテレワーク導入時点のコスト負担が軽くなる。ただし、VPNやセキュリティ確保のための設備にかかる費用が必要である。
留意点 ここで挙げている4つの方式で最もセキュリティに対して慎重な対策を求められる方式だが、 情報システム部門などのICT管理の専門部門が定期的に端末のセキュリティチェックなどを実施することができれば、実施は可能である。そのため、小企業などの規模が小さい企業がテレワークを最初に導入する場合には、比較的取り入れやすい方式である。

それぞれのシステムには、特徴があるので、現状で最も導入しやすいものを選択すると良いでしょう。

セキュリティ対策を実施する

テレワークでは、従業員が業務に関わる情報をオフィス外で利用することになります。

業務に関わる情報は全て企業にとって「情報資産」ですので、導入に当たっては、セキュリティの方針や行動指針に基づく安全な利用が必要です。

また、オフィス外で仕事をする時に懸念される点として、端末そのものの紛失・盗難、セキュリティが確保されていない公衆Wi-Fiの使用、ウイルスへの感染などがありますので、端末自体のセキュリティ強度を上げてデータの漏洩を防ぐことも重要となります。

さらに、テレワーク実施者が、「利用する情報資産の管理責任があること」を自覚して行動をとることが重要です。

つまり、技術的なセキュリティ確保と人為的なセキュリティ確保との両面が必要となります。

このために、テレワーク時の行動ルールを決めるとよいでしょう。 利用端末の管理、社内ネットワークへのアクセス方法、外出先での端末利用に当たっての、のぞき見防止用セキュリティフィルターの利用、書類の持ち出しルールなどです。

ルールによるセキュリティ対策

セキュリティルールの策定

情報を扱う業務に対して、組織として統一のとれた情報セキュリティに関する基本方針や行動指針が必要ですが、テレワーク導入時にも、基本的には組織として統一されているセキュリティガイドラインの遵守が必須です。

既にセキュリティガイドラインがある場合、まずは既存のものが現在の情報を取扱う事業全体に正しく機能するものか見直した上で、テレワーク特有のものをルール化することが望まれます。

例えば、テレワーク実施時に追加が必要になるルールの観点としては、以下の例があります。 ・自宅における作業環境、PC の保管及び管理方法 ・自宅における休憩中のPC の取扱い〔ロックだけでいいのか、保管して鍵をかけるのか〕 ・モバイルワークにおけるPC の管理方法〔体から離さない、ストラップをつける、のぞき見防止フィルターをつける〕 ・オフィスから持ち出すPC の管理〔暗号化、BIOS パスワードなどを義務付け〕 ・オフィス以外での情報管理〔紙情報の管理、共用スペースでの情報管理〕

信頼できないメールは開かないこと

テレワーク勤務時に留意すべき点として、マルウェアによる標的型攻撃やフィッシング等の脅威が挙げられます。 こうした脅威はオフィスで作業をしている時にも発生するのですが、オフィスでは不自然なメールが届いた場合に、「このメールはおかしくないですか?」と近くの人に相談することが簡単にできます。これに対してテレワークでは気軽に相談する相手がいない上に、電子メールを使ってやりとりをすることが多いために、届いたフィッシングメールをつい開いてしまいがちです。 特に、知り合いのメールアドレスを騙って送付されてくる電子メールはテレワークにおいては最も危険です。おかしいと思ったら、そのメールを開かずに隔離することを心がけるようにしましょう。 また、信頼できないウェブサイトでリンクを開く場合も同様です。 ※ このような被害を防ぐため、従業員間の連絡には、電子メールを利用せずに、社内SNS等のメール以外のコミュニケーション手段を活用する企業も増えています。セキュリティを向上させるだけでなく、コミュニケーションの活性化やファイルが簡単に共有できることによる業務効率化等の効果も期待されます。

紙媒体での情報の持ち出しはしない

テレワークの際には、暗号化などの対策が容易になることから、業務に必要な情報を電子データとして管理するペーパーレス化を行うことが推奨されます。

しかし、多くの企業では、全ての情報が電子化されているわけではなく、やむを得ず紙媒体で情報を持ち出すケースもあるのが実態です。

紙による情報持ち出しを認める場合には、資料の紛失・盗難等による情報漏えいのリスクを認識し、これらを踏まえたルールを定める必要があります。具体的には、持ち出し可能な資料の範囲を定める、書類の破棄方法を規定する、資料を持ち出す際には管理表への記載を義務付ける等の対策が考えられます。

また、コワーキングスペースで紙資料を用いて作業や打合せを行う場合、カフェなどと比べてオフィスに近い環境のため、つい気が緩んで紙資料を置き忘れる例が多いようですので、十分留意してください。

技術的なセキュリティ対策

ルールによるセキュリティ対策に加え、技術的な側面から総合的にセキュリティ対策を行うことで、より安全にテレワークを実施することができます。

ここでは、①利用アクセスの管理・制限、②暗号による管理、③運用のセキュリティ、④ネットワークのセキュリティの4つの面から考える必要があります。

①利用アクセスの管理・制限

パスワードが簡単なPCは、第三者による不正なアクセスや攻撃を受けやすくなってしまいます。

したがって、システム及びアプリケーションに対するアクセス制御のための措置を十分講じていないと、不正アクセスされたPCに限らず組織全体のデータ等の情報資産に対する改ざん、破壊、情報漏えい等が生じるおそれがあります。

これらの課題に対応するため、システム及びアプリケーションへのアクセスが従業員本人によるものであることを認証すること(本人認証)や、あらかじめ登録されている端末からのみのアクセスを許可すること(端末認証)などの措置を講じることが望まれます。

また、従業員に貸与しているPCなどの端末情報を一元的に管理すること(端末管理)も重要です。

②暗号による管理

暗号化によって、たとえPCが紛失してしまったり、盗難に遭った場合でも、すぐに情報が漏えいするリスクを防ぐことができます。

※ 異なるサービス間でパスワードを使いまわすことは望ましくありませんが、サービスごとに異なるパスワードが設定していくうちに、パスワード管理の負担が増えてしまいます。

負担を軽減する管理方法として、他者から秘匿したマスターパスワードとなる文字列を一つ作り、サービスごとのパスワードは、マスターパスワードに続けて文字や数字を追加する方法が挙げられます。 この際、パスワードを忘れてしまった場合に備えて、追加分のみをメモや電子ファイルとして保存しておくと良いでしょう。 万が一、追加分のメモが漏えいした場合であっても、マスターパスワードは秘匿されているため、不正アクセスのリスクを抑えることができます。 このような手法をとることで、簡単に安全なパスワード管理をすることが可能です。

③運用のセキュリティ

PCやサーバ等、情報を直接扱っている機器へのセキュリティ対策を行う必要があります。

特に重要なものはウイルス対策ですが、ウイルスや不正アクセスの手口は日々多様化しているため、常に新たな脅威に備えたセキュリティ対策を心掛けておく必要があります。

具体的には、悪意あるソフトウェア等の手口は日々進化しており、対策ソフトのメーカーもそれに対抗すべく、日々最新の対策を講じています。そのため、導入した対策ソフトを含むソフトウェアを最新の状態にするアップデートを定期的に行うことが重要です。 特に情報システム関連の部署は、最新のソフトウェアがテレワーク実施者の利用しているPCに反映されているか、常に注意が必要です。 例えばリモートデスクトップを採用している職場の場合、オフィス内のPCが常時起動されたまま、再起動によって更新されるソフトウェアがなかなか更新されないことも有ります。

情報システム関連の部署やテレワーク推進部署が適宜メールや掲示板などを用いて事業所内に更新の周知を行い、システム上からも最新バージョンのシステムに切り替わっていないPCがないか、注意しましょう。 また、定期的なウイルスチェック(ウイルススキャン)の徹底も大切です。

④ネットワークのセキュリティ

ネットワークを通じてやり取りされる情報、及びネットワークを支える機器・設備を安全に使い続けるため、ウイルス感染や不正アクセスがされにくいネットワークを用意しましょう。

十分にセキュリティ対策を施していないネットワークを使い続けた結果、情報資産全体に悪影響となり、最悪の場合、事業を一時的に停止しなければならない事態にもなるおそれがあります。

ネットワークのセキュリティは特に、個々のテレワーク実施者よりも組織の情報システムを担当する部署の意識が問われています。 テレワーク実施者が安全なネットワークを利用してアクセスできる環境を提供し、ネットワークからの不正侵入に対して対策をするとともに、日頃から問題が起きていないかをチェックする体制を作りましょう。

物理的なセキュリティ対策

ルールによるセキュリティ対策と技術的なセキュリティ対策では不十分な場合があります。 例えば、盗難やスパイ活動、破壊等の損害など、PCやサーバという実体あるもの(ハードウェア)が危機にさらされる場合です。

そこで「物理的なセキュリティ対策」が必要となってきます。 具体的には監視カメラや入退出管理といった盗難防止策や、施錠棚やシュレッダーによる情報漏えいの防止策などが挙げられます。

物理的なセキュリティはテレワークの導入と同時に厳密に見直す、ということはほとんどありません。

しかし、基本的に情報や情報に関する設備のある場所について、例えば「サーバや書類ラックは常に施錠されているか」「入退室の記録が適切な期間保管されているのか」といった確認が重要です。

テレワークでは所属オフィス以外の場所が「オフィス」になります。 そのため、新しく執務環境とみなす場所については、オフィス同様の物理的セキュリティ対策をする必要があります。

例えば、在宅勤務時には「自宅に会社貸与のPCを施錠管理できる棚があるか」「執務中の家の立ち入りは不特定多数ではないか」などの確認は必要です。これらの確認には、テレワーク利用申請等の申請書類に執務環境を明記させたり、誓約書等を交わすことで十分な注意を約束するように指導するなどの対応が有効です。

また、ペーパーレス化を進めることは、セキュリティ対策にもつながります。資料を全て電子化しておくことで、紙資料をオフィス外に持ち出す必要がなくなるので紛失や盗難が防げるほか、社内での情報整理が簡単になるので、情報の管理がしやすくなります。

その他の参照

この他にもテレワークを導入するにあたって、必要となるセキュリティ対策は多々あります。 総務省の公表するテレワークセキュリティガイドラインに詳しく掲載されていますので、ご参照ください。

対象業務や対象者の選定

テレワークの対象となる「業務」を選定するに当たっては、「業務」単位で整理することがポイントです。

業務全体の見直しを、次のような観点で行うことが考えられます。

①業務にかかる時間 :その業務にどれくらいの時間がかかるか。
②使用する書類 :使用する書類はあるか。書類は紙媒体か、電子化されたファイルか。
③使用するシステムやツール :アプリケーションやソフトウェアなど、必要なシステムやツールはあるか。
④セキュリティ、情報漏洩リスク :業務上で取扱う顧客情報や個人情報があるか。 ⑤関係者とのコミュニケーション :業務は何人で行うか。関係者とのやりとりの頻度はどのくらいか。

テレワークは技術者、事務職、営業職、管理職など幅広い層の業務に適用可能です。

特にPCによる業務はテレワークに適しているため、ペーパーレス化や無駄な業務の削減、業務の電子化といった業務の洗い出しによって、集中できる時間を創出することが可能になっています。

小売業等であっても、商品の紹介のためのチラシ作成、店内の商品陳列のレイアウト作成等、PCを使った業務があります。

まず、現状の業務を洗い出した上、業務を整理し、個々の業務について「どうすればテレワークが可能になるか」を検討することから始めるとよいでしょう。

テレワークの対象として適した業務を確認出来たら、次に対象者の範囲を決定します。

対象者の選定に当たっては、関係者の理解を得られるよう、明確な基準を設けることが重要です。

基準については実施に条件を設けることで、その後のテレワーク推進がしやすくなります。 特にライフステージに関係した利用ルールや対象者の制限を設ける場合、まずは対象の従業員にニーズ調査をしましょう。

対象者を制限した場合でも、対象者が実際にテレワークを実施するかどうかは、本人の意思によるべきです。

例えば、トライアルの際には、対象者の基準を設けた上で「社内でテレワークを実施してみたい従業員を募る」という試みをしてみるのもよいでしょう。

助成金

テレワーク導入に当たっては、ICT(情報通信技術)環境の整備や労務管理のコンサルティングなどに費用がかかります。

厚生労働省の「職場意識改善助成金(テレワークコース)」では、テレワークを新規で導入する中小企業に、導入経費の1/2〜3/4(上限額:150万円)を助成しています。

こうした助成金を活用することにより、低額の初期コストでテレワークの導入が可能になります。

支給対象となる取組は、次のとおりです。これらの経費の一部を成果目標の達成状況に応じて支給します。

  • テレワーク用通信機器の導入・運用
  • 保守サポート料、通信費
  • クラウドサービス使用料
  • 就業規則、テレワーク勤務規程、労使協定などの作成・変更
  • 労務管理担当者や労働者に対する研修、周知・啓発
  • 外部専門家(社会保険労務士など)による導入コンサルティング

支給対象

支給対象となる事業主は、次のいずれにも該当する事業主です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主であること
  • 次のいずれかに該当する事業主であること
  • テレワークを新規で導入する事業主であること
  • 時間外労働の制限その他の労働時間等の設定の改善を目的として、在宅又はサテライトオフィスにおいて、就業するテレワークの実施に積極的に取り組む意欲があり、かつ成果が期待できる事業主であること

助成金支給の流れ

助成金利用の流れは、以下の通りです。

  1. 時間外労働等改善助成金交付申請書を事業実施計画などの必要書類とともに、テレワーク相談センターに提出(締め切りは12月2日)
    *審査の上、後日、厚生労働省から交付決定通知書が送付されます。
  2. 交付決定後、提出した計画に沿って取り組みを実施
  3. 事業実施期間終了後、テレワーク相談センターに支給申請書を提出(締切は2月末日) *審査の上、支給決定後、厚生労働省から助成金が支給されます。

その他、詳しいことは厚生労働省雇用環境・均等局 在宅労働課の公表する働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)申請マニュアルに詳しく掲載されていますので、ご参照ください。

テレワーク参照ウェブサイト

本記事においても参照しました、テレワークを導入するに際して役立つ情報ページをお伝えします。

1.厚生労働省ホームページ

※ホームページ内で「テレワーク普及」と検索。以下の順番に選択しても、ご参照いただけます。

2.テレワーク相談センター

テレワークの導入や実施時における労務管理上の課題などについて、個別企業からの相談に対応 する「テレワーク相談センター」を設置しています。 ※「テレワーク相談センター」で検索

3.情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン(在宅勤務ガイドライン)

在宅勤務に関する労働基準関係法令の適用及びその注意点などについて解説しています。 ※「在宅勤務ガイドライン」で検索

4.テレワークセキュリティガイドライン(第3版)

テレワークにおける情報セキュリティ対策について解説しています。 ※「テレワークセキュリティガイドライン」で検索

5.職場意識改善助成金(テレワークコース)

テレワークを新規で導入する中小企業に対する助成制度です。導入経費の 1/2 ~ 3/4(上限額: 150 万円)を助成しています。