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テレワークはどうやって導入するか1 ~新型肺炎対策~

Q 当社は、最近の新型肺炎(コロナウィルス)の感染拡大を踏まえて、在宅勤務等のテレワークを実施せざるを得ないと思っています。
また、これを契機に、採用力の増強・離職防止等の観点から、恒常的な制度として、テレワーク制度を導入することも検討しています。
そこで、テレワークの実施に際して、就業規則上の整備等、必要な手続を教えてください。

A テレワークの実施に際して、就業規則の変更等は必須ではありません。
ただし、従業員に通信費用等の負担をさせるのであれば、その旨の就業規則の改訂が必要となります(労基法89条)。また、実際には、費用負担のほか、テレワークの対象者とテレワークを認める基準、その手続に関する事項、テレワーク勤務中の遵守事項、テレワーク期間中の労働時間の設定と管理に関して、規則を設けた方がよいでしょう。

テレワークの概要

テレワークとは

テレワークとは、総務省や厚生労働省では、ICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方と定義しています。

テレワークは、元来「離れた(テレ)」という言葉と「働く(ワーク)」を組み合わせた造語とされており、その意味では離れた場所で働くという言葉です。

厚生労働省は、2018年3月22日に「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(以下「ガイドライン」といいます)を策定し公表しました。

テレワークを導入する会社のメリット

テレワークを導入する会社のメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 柔軟な働き方が可能になることによって、優秀な人材が職場を離れることを防げる
  • 育児・介護等を理由とした労働者の離職の防止
  • オフィススペースに必要な経費や通勤手当などを削減できる
  • 実際に災害があったときなどにオフィスに来られなくても自宅から業務ができる

労働者側のメリット

労働者側から見たときのメリットですが、以下の点が挙げられます。

  • 通院時間の短縮、通勤に伴う精神的・身体的負担の軽減
  • 育児や介護、病気の治療等の両立
  • ワークライフバランス
  • 通勤が難しい高齢者や障害者の就業機会が拡大する

なお、厚生労働省が発表するテレワークのメリットには、業務効率化を挙げていますが、テレワークの対象とする業務の内容にもよると思います。

例えば、自宅には、分からないことがあれば直ぐに確認できる上司や先輩がいませんし、その他、テレビや寝転がれるスペースもあり、自律して集中して所定労働時間全て働くというのはなかなか難しい面があり得るからです。

2種類のテレワーク

就業形態による分類

このテレワークは、就業形態の違いによって大きくは、雇用型と自営型に分けられます。

雇用型は、その名前のとおり、労基法上の労働者を念頭に置いたもので、ガイドラインでは「労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務」と定義されます。

自営型のほうは、フリーランサーや個人事業主など、請負や業務委託といった契約に基づいて自宅などで仕事を行う形態です。

自営型で行われる仕事の内容としては、「設計・製図」、「データ入力」、[添削・採点]、「ライター」、「文書入力」、「システム設計・開発、プログラミング」といったものが挙げられます。

雇用契約と請負契約の違い

テレワークを行うに当たり、テレワークを行う人が雇用契約か請負契約かによって、企業の管理責任は大きく変わります。

まず、雇用契約により自宅で行う雇用型テレワークの場合は、「在宅勤務」となります。

「雇用契約に基づき、使用者の支配管理下におかれ、使用者の指揮命令を受け情報通信機器を利用して自宅において行う就労形態」を指し、就業場所が自宅になるだけで、労働者であることに何ら変わりはありません。

この場合、労働者の属するメインのオフィスで勤務するときと同様に、労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)、最低賃金法(昭和 34 年法律第 137 号)、 労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)、労働者災害補償保険法(昭和 22 年法律第 50 号)等の労働基準関係法令が適用されることとなります。そのため、使用者は労働者がどこでも安心して働けるように労務管理を行わなければなりません

つまり、雇用契約による「在宅勤務」であれば、労働者の時間管理を行う必要があり、労働時間のカウントにより賃金を支払わなければなりません。

次に、請負契約により仕事を注文する者及び仲介事業を行う者(以下「注文者」といいます。)から委託を受け、情報通信機器を活用して主として自宅又は自宅に準じた自ら選択した場所において、成果物の作成又は役務の提供を行うことを自営型テレワークといいます。

この場合、労働者ではないので、労働関係法令は適用されません

そもそも請負契約は「仕事を完成することを約東し、仕事の結果に対して報酬を支払う契約」なので、請負人(自営型テレワーク)は、注文者から指揮命令を受けたり管理されたりするような立場ではなく、また注文者は業務に必要な情報の提供等を行うのみで、具体的な指揮命令を行ってはなりません。

在宅ワーカーに対して細かな指揮命令を行うと、在宅ワーカーの労働者性が強くなり、偽装請負とみられるリスクが生じますので注意が必要です

時折「テレワークを導入して、自宅で慟いてくれる人を募集したい」という企業から、「雇用契約と請負契約のどちらの方が良いか」と相談されることがあります。

企業のご要望をうかがってみると、仕事のやり方や仕事場所については具体的に会社が決めたいが請負契約がよい等、雇用型と請負型の違いについての理解が乏しく、契約区分の誤解が生じることも多いです。

このような雇用型と自営型が混在しているときは、前述の雇用契約と請負契約の違いを説明した上で、混在することで生じる法的リスクを伝え、紛争防止のためにどちらかの区分に徹底するようアドバイスをしています。

また、雇用型の在宅勤務と自営型の在宅ワークの特徴が混在しているケースでは、在宅ワーカー自身も請負契約であることを理解せず、雇用型の在宅勤務のつもりで働いていることが少なくありません。

仕事を発注する人とそれを受ける人とが良好な関係で何の問題もない間は良いのですが、ひとたび問題が生じると、請負人であるはずの自営型テレワークの労働者性を争うトラブルに発展しやすいので十分な注意が必要です。

労働者性の判断に関して、裁判所は、雇用契約、請負契約といった形式的な契約形式のいかんにかかわらず、実質的な使用従属性や、労務提供の形態や報酬の労務対償性、さらにこれらに関連する諸要素をも勘案して総合的に判断しています。

具体的には、 ・仕事の依頼への諾否の自由
・業務遂行上の指揮監督
・時間的・場所的拘束性
・代替性
・報酬の算定・支払方法 を主要な判断要素とし
・機械・器具の負担、報酬の額などに表れた事業者性
を補助的な判断要素として決定されます。

以上のように、テレワークを導入する際は、労働者性の判断基準を正しく理解した上で契約形態を定め、適切に対応することが重要となります。

雇用型テレワークの形態、導入目的

雇用型のテレワークは、業務を行う場所に応じて、「自宅勤務」、「サテライトオフィス勤務」、「モバイル勤務」に分類できます。

自宅勤務:通勤を要しないことから、事業場での勤務の場合に通勤に要する時間を有効に活用できます。また、例えば育児休業明けの労働者が短時間勤務等と組み合わせて勤務することが可能となること、保育所の近くで働くことが可能となること等から、仕事と家庭生活との両立に資する働き方です。

サテライトオフィス勤務:自宅の近くや通勤途中の場所等に設けられたサテライトオフィスでの勤務は、通勤時間を短縮しつつ、在宅勤務やモバイル勤務以上に作業環境の整った場所で就労可能な働き方です。

モバイル勤務:労働者が自由に働く場所を選択できる、外勤における移動時間を利用できる等、働く場所を柔軟に運用することで、業務の効率化を図ることが可能な働き方です。

労働時間の管理

使用者は、原則として労働時間を適正に把握する等労働時間を適切に管理する責務を有していることから、下記に掲げる各労働時間制度の留意点を踏まえた上で、労働時間の適正な管理を行う必要があります。

労働時間の適正な把握

通常の労働時間制度に基づきテレワークを行う場合についても、使用者は、その労働者の労働時間について適正に把握する責務を有し、みなし労働時間制が適用される労働者や労働基準法第41条に規定する労働者を除き、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)に基づき、適切に労働時間管理を行わなければなりません。

同ガイドラインにおいては、労働時間を記録する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によること等が挙げられています。

また、やむを得ず自己申告制によって労働時間の把握を行う場合においても、同ガイドラインを踏まえた措置を講ずる必要があります。

具体的には、業務の開始・終了時に電子メールや電話で報告を受けるという方法や、勤怠管理のツールで始業・終業時刻等を管理できる社内システムなどが利用されている状況があります。

テレワークに際して生じやすい事象(中抜け時間)

在宅勤務等のテレワークに際しては、一定程度労働者が業務から離れる時間が生じやすいと考えられます(いわゆる中抜け時間)。

ここでいう中抜け時間というのは、「一定程度、労働者が業務から離れる時間」とされています。

まず前提の部分ですが、「休憩と労働時間の線引き」について確認させていただきます。

判例上、労基法上の労働時間は、「使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる」とされています。

実作業に従事していない時間、「不活動時間であっても労働からの解放が保証されていない場合には労基法上の労働時間にあたる」ことになり、「労働契約上の役務の提供が義務づけられていると評価される場合には、労働からの解放が保証されているとはいえない」、すなわち労働時間に当たるという判断が示されております。

ここでは、労働者が業務から離れる時間があるとしても、それが労働時間か、休憩時間かというのは、実態を踏まえて厳格な基準で判断されるという点をご確認いただければと思います。

中抜けについては、まず、労働者が勝手に中抜けができるということではなく、使用者の許可のもとにおいて認められるということが前提になりますが、それを前提として所定労働時間中は、客先から電話がかかってきた、あるいはメールへの返信を求められるといった状況にあることは少なくないと思います。

この場合、休憩時間にあたるというためには自宅等において労働から解放されているかどうかが問われることにもなりますが、労働から解放されていると言うためには明確な基準があったほうがよいのではないかと思います

ガイドラインでは中抜け時間の取扱いについて、「その開始と終了の時刻を報告させる等によって、休憩時間として扱い、労働者のニーズに応じて始業時刻を繰り上げる、又は終業時刻を繰り下げることや、その時間を休憩時間ではなくて時間単位の年次有給休暇として取り扱う」といった取扱いが紹介されています。

いずれにしましても、中抜け時間について、不就労の時間として賃金を控除する場合には、賃金を控除することと、賃金控除の計算方法についてあらかじめ確認しておくことが望ましいと考えられます。

テレワークに際して生じやすい事象(移動時間)

次いで、通勤時間や出張旅行中の移動時間などの移動時間の取扱いです。

テレワークの性質上、通勤時間や出張旅行中の移動時間に情報通信機器を用いて業務を行うことが可能です。

これらの時間について、使用者の明示又は黙示の指揮命令下で行われるものについては労働時間に該当します。

使用者の明示・黙示の指揮命令下にある場合として、典型的には移動中、何か重要なものを保管しなければならない、あるいはそういう重要なものを運ぶことを主目的として移動する場合が挙げられますが、そうした例外的な場合は別として、通勤や出張先に赴くというのは、仕事をすべき場所に移動する時間、あるいは仕事を終えた後に帰宅する時間ですので、原則としては労働時間に当たらないと考えます。

テレワークに際して生じやすい事象(勤務時間の一部でテレワークを行う場合の移動時間)

午前中だけ自宅やサテライトオフィスで勤務をしたのち、午後からオフィスに出勤する場合等、勤務時間の一部でテレワークを行う場合があります。

  こうした場合の就業場所間の移動時間が労働時間に該当するのか否かについては、使用者の指揮命令下に置かれて いる時間であるか否かにより、個別具体的に判断されることになります。

ガイドラインでは、まず、「使用者が移動することを労働者に命ずることなく、単に労働者自らの都合により就業場所間を移動しその自由利用が保障されているような時間については、休憩時間として扱うことが考えられる」とされています。

労働者の判断で、例えば午前に自宅勤務して午後から出社するといった場合、午後から会社に行く時間は労働時間に当たらないと考えられます。

次にガイドラインでは、「一方で、使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じており、その間の自由利用が保障されていない場合」、例えば、テレワーク中の労働者に対して、使用者が具体的な業務のために急遽至急の出社を求めたような場合は、当該移動時間は労働時間にあたる」とされています。

所定労働時間中に急な出社の要請、例えば特定の会議への出席や、急遽生じたシステム障害の対応のため出社を命じる場合には、業務指示による勤務場所間の移動と考えられ、移動に要する時間は労働時間になると考えられます。

なお、テレワークの最中の出社命令の有効性、例えば育児・介護の目的で自宅勤務を認めている日に急に出社を命じられるかどうかについては、移動時開か労働時間に該当するかどうかとは別に慎重に考える必要があると思われます。

次回の記事では、テレワークを導入した場合の時間外労働の考え方、裁量労働制やフレックスタイム制社員についてテレワークを導入する場合の注意点について、解説していきます。