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従業員の賃金体系を変更したいがどうすべきか。~労働条件を変更する方法~ 

Q.当社は、ベンチャー企業として資金調達を実施できるほどに成長しましたが、最近、主要事業の売上が芳しくありません。
そのため、やむを得ず、従業員に対して当社の経営状況を説明し、従業員の賃金体系を見直したいと思います。
そこで、従業員の労働条件を変更するためには、どのような手続きがあるのか、また、それぞれの注意点を教えてください。

A.貴社が労働者との労働条件を変更する方法としては、
① 労働者との合意によって変更する
② 就業規則の改訂によって変更する
③ 労働協約の締結、改訂によって変更する
④ 変更解約告知を行う
という4つの方法が存在します。

貴社においてどの手段を用いるべきか、それぞれの手段の注意点を説明していきます。

労働条件変更の3つの方法

企業が従業員の労働条件を「変更」する方法としては、
① 労働者と使用者の合意によって変更する
② 就業規則の改訂によって変更する
③ 労働協約の締結、改訂によって変更する ④ 変更解約告知を行う という4つの方法が存在します。

このうち①③④は、個々の労働者又は労働組合が労働条件変更に同意して初めて成立するものです。

他方で、労働契約法(以下「労契法」といいます)は、労働条件の変更は合意によるとする原則をとりつつ、i変更の合理性、ii変更後の就業規則の周知という要件を満たせば、②就業規則の改訂によって労働条件変更が可能であると定めています(10条)。

これは、上記要件を満たしていれば変更に反対する従業員の労働条件も有効に変更されることを意味します。

ただし、いずれの方法を取るにせよ変更後の労働条件が労働基準法(以下「労基法」といいます)の定める最低基準より不利であってはなりません(13条)。

労働者と使用者の合意

労働契約法8条は、労働者と使用者は合意により労働契約の内容である労働条件を変更することができるとし、これに続き同法9条本文は、使用者は、労働者との合意なく、就業規則の変更により労働条件を不利益に変更することはできないと規定しています。

これは、労働契約の合意原則(同法1条参照)が、労働契約の成立の場面(同法6条)だけでなく、労働契約の内容の変更の場面にも及ぶことを確認したものであり、とりわけ使用者が労働者との合意なく一方的に労働契約の内容を変更することを原則として禁止した(その私法上の効力を否定した)ものです。

会社と従業員とが合意により労働条件を変更する場合とは、たとえば、会社が従業員向け説明会を開催し、厳しい経営状態から人件費削減が必須であること、人事賃金制度を改正して給与を○%引き下げる ことを説明し、従業員が自分の労働条件がどう変わるかを理解して同意書を提出するような場合です。

労契法8条の合意原則をめぐって解釈上、就業規則変更に労働者が同意している場合には、就業規則変更の周知や合理性の有無(同法10条)を問うことなく労働契約の内容が変更されるかが問題となることもあります。

この点については、合意による変更(8条)が原則であり就業規則による変更(10条)を例外とする労契法の条文の構造からすると、たとえ就業規則による変更が周知や合理性を欠き無効である(例外の適用がない)としても、使用者と労働者間で合意が成立している(原則が当てはまる)場合には、その合意に沿って労働契約の内容が変更されると解されることになるでしょう(山梨県民信用組合事件・最二小判平28・2・19民集70巻2号123頁、協愛事件・大阪高判平22・3・18労判1015号83頁など)。

合意をする際の法的問題点

ただし、この合意も法令(強行法規)、労働協約、就業規則に反するものであってはなりません(労基法13条、労働組合法16条、労契法12条参照)。

また、労働条件の変更を基礎づける労働者と使用者の「合意」(労契法8条)の認定は、労働者の真意に基づくものかという観点から慎重に行わなければなりません。

この点について、判例は、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件変更に対する労働者の同意の有無は、労働者の不利益の内容・程度、労働者が変更を受け入れた経緯・態様、それに先立つ労働者への情報提供・説明の内容に照らし、労働者の自由な意思に基づいたものと認めるに足りる合理的理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断すべきであるとし、労働者が当面の退職金額と計算方法を知り同意書に署名押印しただけでは足りず、使用者から変更の必要性、具体的な不利益の内容・程度についても情報提供や説明がなされるべきであったと判示しました(前記山梨県民信用組合事件。その他、東武スポーツ〔宮の森カントリー倶楽部・労働条件変更〕事件・東京高判平20・3・25労判959号61頁なども参照)。

もっとも、労働者の真意に基づく合意があったか否かを判断するに際しては、変更後の労働条件について労契法10条で定める「変更の合理性」を満たすか否かは問われません。 同条は変更に同意しなかった従業員について適用される条文であり、変更に同意した従業員については適用されないと理解されているからです。

従業員からの同意の取り方

労働者の同意については、労働者から明示的な同意を得る「オプトイン方式」と労働者が明示的に拒否をしない場合に同意したものとみなす「オプトアウト方式」が考えられます。

※なお、「オプトアウト」については、個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン(平21.10.9 厚労・経産告2)参照

まず、オプトイン方式(例えば、従業員が同意書を提出する)の場合には、従業員の同意が明示的に行われることになりますので、使用者から強迫されたなどの特別な事情がない限り、制度変更に対する労働者の同意があったものと認められます。

そして、労契法9条に基づいて、就業規則の変更が可能です。

これに対して、オプトアウト方式については、同意の有無が厳格に認定される傾向にあります。

これは、賃金が極めて重要な労働条件の一つであることから、賃金の減額を生じる可能性のある就業規則の変更に対する労働者の同意は、真に行われる必要があるからです。

この点について、前掲の協愛事件(大阪高裁 平22. 3.18判決)は、使用者が退職金制度を廃止する際、全体会議での説明や労使協議を経たところ、従業員から異議が出なかったという場合、退職金制度を完全に廃止するという従業員に重大な不利益を強いる改定について、単に異議が出なかったということで同意があったものと推認することはできず、従業員においてそのような不利益な変更を受け入れざるを得ない客観的かつ合理的な事情があり、従業員が不利益な変更に真に同意していることを示しているとみることができるような場合であることが必要としています。

このような裁判例からすると、単に賃金制度の改定に関する説明会を開催し、特段の異議がなかったという事情をもって、労働者が同意したものとみなすオプトアウト方式を採用することは法的に無効となる可能性が少なくはないといえます。

ただし、エイバック事件(東京地裁平11. 1.19判決 労判764号87ページ)は、使用者の資金繰りが相当にひっ迫していた状況において、使用者から給与体系を固定給のみから固定給と歩合給の新体系に変更することを求められ、従業員が即時に異議を述べず、また、その後も振り込まれる給与が少ないという異議を述べていないことから、労働者が賃金体系の変更を黙示に合意したと認めています。

そのため、やむを得ず、オプトアウト方式によって従業員から同意を得るとしても、上記の判例に鑑み、不利益な制度改定を受け入れざるを得ない客観的かつ合理的な事情がある場合や、賃金制度改定に異議がないことが認められるような状況に限ってオプトアウト方式を採用するべきといえます。

弁護士 澤田直彦

このような厳格な裁判例の傾向からすれば、賃金・退職金といった重要な労働条件を変更するケースにおいて、個々の従業員の同意により労働条件を変更させたいのであれば、従業員から明示の同意、それも証拠化の観点から「書面」による同意を取得する方法をとるのが重要です。口頭では言った言わないの問題になり、裁判での立証が難しくなるためです。

個別合意に至った従業員との関係では「変更の合理性」が問題にならないこと、同意しなかった従業員との関係でも他の従業員が多数賛成しているという状況が「変更の合理性」にとってプラスに働くことから、個別同意の取得は法的リスク低減のためにも重要な方法ということができます。

さらに、従業員から明示の同意を得た場合であっても、何の労働条件がどう変更されるのか全く知らされずに同意書だけ提出するようなケ-スでは、同意は真意に基づくものではないとして効力を否定される可能性があります。

そのため、実務上は、賃金制度の変更内容を記載した説明会の資料を作成し、全社員を説明会に参加させるようにした上で、説明会では質疑応答の時間を設けて、従業員の疑問を解消することまで行う必要があると考えられます。

したがって、同意を取得するに当たっては、従業員向け説明会を実施するなどして、具体的に何の労働条件がどう変更され、従業員にいかなる不利益が生じるのかを理解できる情報を提供し、その上で同意を取得することが重要と言えます。なお、賃金や退職金等の重要な労働条件を変更する場合には、可能な限り賃金制度変更によって生じる労働者の不利益の程度を少なくする、あるいは変化の幅・期間を緩和することが有用です。

就業規則の変更による労働条件の変更

労契9条では、就業規則の変更により労働条件を不利益に変更する場合には、労働者との合意が必要とされています。

しかし、①就業規則の変更について合理性があり、②変更後の就業規則を周知すれば、労働者との合意がなくても就業規則の変更が可能となり、労働条件の不利益変更ができます(労契法10条)

就業規則変更の合理性

①就業規則の変更について合理性がある場合とは、変更後の労働条件がそれ自体として合理的か否かではなく、あくまで従前の労働条件から新たな労働条件への「変更」が合理的か否かを見るものです。

労契法7条が就業規則の定める労働条件それ自体の合理性を見るのとは視点が異なりますのでご注意ください。

この変更の合理性で考慮されるポイントですが、労働者の受ける不利益の程度・労働条件の変更の必要性・変更後の就業規則の内容の相当性・労働組合との交渉の状況などの事情を考慮した「合理的」なものでなければなりません。

このような要件を満たす変更であれば、労働者を不当に不利にする就業規則の変更とは言えないため、労働者との合意を得ずに変更することが可能とされています。

ただし、労契法10条の「変更の合理性」は4つの要素を比較して鑑みるという特性から(主要な要素は、労働条件の変更の必要性、労働者の受ける不利益の程度となりますが)、どうしても判断の予測可能性が低いといわざるをを得ません。

もちろん、判例法理から導かれるルールやポイント、そして当該企業における労使間の信頼関係を踏まえた制度変更の検討は重要なことです。 しかし、もし仮に事案が裁判所に持ち込まれたとして、裁判所が最終的にどのような法的判断を下すかを100%予測し切るのは性質上困難なことです。

また、 就業規則の不利益変更が正面から問題となる事案は、その結論が訴訟当事者問のみの問題に止まらず、他の利害関係者に波及することから、一般的に、和解による解決にはなじみにくい事案であるといわれます。

そこで、会社と労働者間でこの点が争いとなった場合には、裁判で解決することに固執するのではなく、早期の適切な解決に向かって、双方が知恵を出し合うという姿勢も必要です。その際の調整のためのツールとして、代償措置や経過措置なども有効です。

変更後の就業規則の周知

②労契法10条の「周知」は、必ずしも労基法106条1項が法定する形式による必要はなく、実質的に見て、当該就業規則の内容を事業場の労働者らが知り得る状態に置いていたと評価できれば足ります。この点は労契法7条も同じです。

実務的には、事業場内の見やすい場所に備え置く、社内イントラネットからアクセス可能であることを知らせるといった方法が取られます。

このような方法をとれば、個々の従業員が改訂後の就業規則の内容を現実に知っていたかどうかは問われません。

労働協約の変更による労働条件の変更

労働協約(労働条件や労使間のルールなどについて、労働組合と使用者の合意に基づき、書面化など一定の様式を満たすことにより成立したもの)によって労働条件を不利益に変更することができるかについて、現在の判例(朝日火災海上保険〔石堂・本訴〕事件・最一小判平9・3・27労判713号27頁)は、労働条件の不利益変更も、原則として労働組合の協約締結権限の範囲内であるとして、変更内容が不合理でない限り有効であるとの立場をとっています。

そもそも団体交渉は、単にある時点である事項に限定して行われるにすぎないものではなく、たとえば、経営状況が苦しい中で雇用を守るために賃金面や労働時間面で一定の譲歩をするなど、さまざまな事項を包括しながら中長期的な動向をも視野に入れて行われる労使間の取引(長期的なギブ・アンド・テイクの取引)という性格を持っています。

このような取引の中で、いかなる場合でも不利益な変更が認められないとすると、労働組合の交渉力は大きく縮減され、労働者の全体的・長期的利益に反することになりかねません。

団体交渉のこのような性格からすると、ある時点である事項について労働条件の不利益変更を行うことも含め、労働組合には広く協約締結権限が認められていると解すべきです。

規範的効力

労組法16条は、 ①労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効となり、 ②無効となった部分は労働協約の内容になると定めています。これを労働協約の規範的効力といいます。

労働協約の規範的効力は、個別合意、就業規則に定められる労働条件と比較して有利な場合だけでなく、労働協約の方が不利な場合にも及びます (有利性原則の否定)。この有利・不利を問わず労働協約が優先するという点が重要なところです。 規範的効力が及ぶ範囲は、労働協約を締結した労働組合に所属する従業員に限られます。 組合に所属していない非組合員には及びませんし、複数の労働組合が併存するときに別の労働組合に所属している従業員にも規範的効力は及びません。 このことから、労働組合との問で変更後の労働条件を定める労働協約を締結することができた場合、その組合に所属する従業員との関係では、労働協約の規範的効力によって変更が有効に実施されます。

一般的拘束力

一つの事業場に「常時使用される同種の労働者」の4分の3以上を占める労働組合があり、その労働組合との問で労儺協約を締結した場合、その 労働協約は、所属組合員に対する規範的効力を有するとともに非組合員に対しても効力を発揮します(労組法17条)。

このような非組合員に対する効力を労働協約の一般的拘束力といいます。

労働協約が一般的拘束力の要件を満たせば、所属組合員だけでなく、非組合員の労働条件も協約の内容にそって有効に変更されます。 就業規則改訂のときのような厳格な要件は課されないこと、個別合意・就業規則と比較して有利一不利を問わず協約が優先適用される ことは規範的効力の場合と同じです。

一般的拘束力が問題となるのは、労働組合に加入していない非組合員であり、少数組合の団結権、団体交渉権等を保障するため、他の少数組合に加入している労働者には労働協約の効力は及ばないとされています。

限界

もっとも、この労働組合の協約締結権限にも限界はあります。

第1に、すでに具体的に発生した個人の権利を処分する場合(香港上海銀行事件・最一小判平元・9・7労判546号6頁〔すでに発生した退職金債権の額を引き下げる協約の効力を否定〕)や組合員を退職させる取決め(北港タクシー事件・大阪地判昭55・12・19労判356号9頁〔定年年齢を超えている従業員を退職させる新定年制導入を定めた協約の効力を否定〕)など、組合員個人の権利性が強いものを処分する決定です。

これは「個別的授権事項」と呼ばれ、組合員個人の授権(同意)がない限り労働組合が勝手に処分することはできないと解されています。

第2に、特定層の組合員を殊更不利益に取り扱うことを目的とするなど、労働組合の本来の目的を逸脱して協約を締結することです(前記朝日火災海上保険〔石堂・本訴〕事件)。

第3に、組合大会での承認など民主的な手続を踏まないで協約を締結することです(中根製作所事件・最三小決平12・11・28労判797号12頁、鞆鉄道事件・広島高判平16・4・15労判879号82頁、前記山梨県民信用組合事件)。

組合の権限の行使は民主的手続を踏んだ上で行うことが前提となっており(労働組合法5条2項等参照)、これを欠く組合の行為は権限の範囲外と考えられるからです。これらの場合には、組合の協約締結権限は否定され、労働協約自体の効力が生じないことになります。

変更解約告知

変更解約告知とは

変更解約告知とは、労働条件の変更や新たな労働条件の下での新契約締結の申し出に労働者が同意しない場合には労働契約を解約するという意思表示です。

もっとも、労働条件の変更は、通常は就業規則を合理的な範囲内で変更すれば行えます。

変更解約告知は、合理的な範囲を超えて労働条件を変更したい場合、就業規則の作成義務のない事業場で労働条件の変更を行う場合、職種や勤務地等に関し就業規則の変更によっても変更しえない合意(労働契約法10条但書参照)がなされている場合、あるいは正社員から契約社員への契約形態変更など新しい契約の締結が必要な場合などに用いられることになります。

解雇の有効性

労働者が変更解約告知の申し出を拒否したために解雇された場合、その有効性はどのように判断されるべきか問題となります。

解雇の有効性判断である以上、基本的には解雇権濫用法理(労契法16条)の枠組みでの問題処理がなされるべきです。

たとえば、経営悪化を背景に人件費削減のためになされた変更解約告知であれば、正社員から契約社員への契約形態変更の申し出を、解雇回避努力に準ずるいわば「雇用維持努力」の一つとして考慮することも可能でしょう。

裁判例の中には、解雇の有効性判断に際して変更解約告知の申し出があったことを積極的に評価するもの(スカンジナビア航空事件・東京地決平7・4・13労判675号13頁)としないもの(大阪労働衛生センター第一病院事件・大阪地判平10・8・31労判751号38頁)とがあります。

異議をとどめた承諾

変更解約告知に関して近年議論となっているのが、労働者が変更解約告知に対して異議をとどめた承諾をした上で新しい労働条件の下で就労すること、すなわち裁判で労働条件変更の効力を争いつつ新条件下で就労を開始することを使用者が許容すべきかどうかです。

これが認められれば、労働者は労働条件変更を呑むか、それともそれを拒否して解雇されるかという究極の選択を迫られずに済みます。

つまり、前者(労働条件変更)を受け入れたが実は解雇された上で訴訟をすれば勝てたケースであった、あるいは逆に後者(変更を拒否して解雇)を選択して解雇の効力を訴訟で争ったが敗訴してしまった(前者を選んでいればよかった)というような結果を防止することができるのです。

ただし、裁判例には、異議をとどめた承諾は申込みの拒絶にすぎず(民法528条参照)、現行法上その根拠もないとしてこれを実質的に認めなかったものもあります(日本ヒルトンホテル〔本訴〕事件・東京高判平14・11・26労判843号20頁)。

まとめ

  • 使用者が労働条件の変更を行う場合、労働者が当該変更に同意していれば、労働条件は両者の合意に基づいて適法に変更されます。 ただし、当該合意は、労働基準法などの強行法規に違反したり、就業規則・労働協約の定めよりも労働者に不利な労働条件を定めたりするものであってはなりません。 また、個々の従業員の同意を取りに行く場合は、明示の同意、それも証拠化のため書面による同意取得を行うべきです。また、同意の真意性を担保するため、同意取得に当たり従業員に十分な情報提供を行うことが重要です。
  • 個々の従業員から同意を取得しても、変更前の労働条件を定めた就業規則条項が残っていると、せっかく得られた同意が無効になってしまいます(労契法12条)。そのため、就業規則改訂を忘れないようにしてください。
  • 労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働条件の不利益変更をすることは、原則としてできません。 もっとも、使用者が不利益変更した就業規則を、変更後に労働者に周知し、かつ、その就業規則の変更が「合理的」と認められる場合には、当該就業規則の内容が個々の労働条件となり、これに反対する労働者の労働条件も、変更後の内容となります。
  • 労契法10条の「変更の合理性」の要件は予測可能性に乏しい面がありますが、法律事務所では判例法理のほか、個々の労働条件ごとのポイントを参考とし、制度の内容を整えております。ここを押さえることによって、個別同意の取得、労働協約の締結に向け、従業員や労働組合の理解を得やすくなりますし、何より労使間の信頼関係を維持した上での施策実施に資すると言えます。
  • 就業規則改訂による変更の第2の要件が,変更後の就業規則を実質周知することは忘れないでください。 「変更の合理性」が満たされても、実質周知を欠くとそれだけで変更が無効になってしまいます。施行日までに事業場内の備え付け、社内イントラネットへのアップ等の方法で確実に手続をとる必要があります。なお、変更の有効要件ではありませんが、法の定める手続として労働基準監督署長への届出、意見聴取も実施してください(労契法11条,労基法89条,90条)。
  • 社内に従業員が所属する労働組合が存在する場合、労働組合との間で、新しい労働条件について労働協約を締結することが検討対象に入ります。 交渉の結果、そのような労働協約を締結できれば、その組合に所属する従業員との関係では、組合員の労働条件を不利益に変更する労働協約も、効力が生じることとなります。 労働協約による労働条件の不利益変更は、特定の労働者または一部の組合員を殊更に不利益に取り扱うこと等を目的とするなど、労働組合の目的を逸脱して締結されたものと認められない限り、有効です。
    また、労組法17条(4分の3以上)の要件を満たす場合、労働協約が非組合員にも拡張的に適用されます。労組法17条の要件には至らずとも、過半数組合と合意に至れば「変更の合理性」の一応の推測が機能します。
  • 変更解約告知は、労働条件変更を目的として行われる解雇であり、個別的な労働条件変更のための新たな手法として注目されつつあります。しかし、変更解約告知に関する法律上の規定はなく、判例法理上の効力判断の枠組みも確立していない状況にあります。