1. ホーム
  2. 労務管理

懲戒処分に当たり気を付けるべき事項!*ひな形付*

Q 20日間、無断欠勤をしている社員がおり、本当に困っています。この社員を懲戒処分しようと思うのですが、気を付けるべきポイントはありますか?

A 懲戒処分を行うには、あらかじめ就業規則にその種類・程度を記載し、該当する就業規則に定めた手続きを経る必要があります。また、就業規則は労働者に周知させておくことが必須です。

また、懲戒処分には7種類程度存在し、従業員の犯した問題行為に応じて懲戒処分を選択する必要がある等、気を付けるべきポイントがあります。

これらのポイントについて以下、解説していきます。

懲戒処分とは

懲戒処分とは、企業が従業員に対して行う労働関係上の不利益措置のうち、企業秩序違反行為に対する制裁のことをいいます。 違反行為を懲戒規定と照らし合わせた際、その従業員に明らかな秩序違反、懲戒規定違反が認められるという場合に、従業員の違反内容に応じて制裁を決定します。どのような懲戒処分を下すのかといった懲罰の基準は、各企業によってさまざまです。

懲戒処分といっても、その内容や手続きには幅があるのです。懲戒処分を軽いものから列挙すると、 以下のとおりとなります。

  • 戒告
  • けん責
  • 減給
  • 出勤停止
  • 降格
  • 諭旨解雇
  • 懲戒解雇

違反行為を懲戒規定と照らし合わせた際、その従業員に明らかな秩序違反、懲戒規定違反が認められるという場合に、従業員の違反内容に応じて制裁を決定します。どのような懲戒処分を下すのかといった懲罰の基準は、各企業によってさまざまです。

それでは、上記の懲戒処分の種類について解説していきます。

戒告とけん責

戒告とは、将来を戒めることをいい、けん責とは、始末書を提出させて将来を戒めることをいいます。いずれも実質的な不利益を課さない処分ではありますが、昇給・昇格・賞与などの人事考課で不利に考慮されることはあります。

始末書(例)

始末書

減給

減給とは、労働者が現実になした労務提供に対応して受けるべき賃金額から一定額を差し引くことをいいます。

この減給については、労働基準法91条により、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期の総額の10分の1を超えてはならないとされています。

出勤停止

出勤停止とは、労働契約を存続させながら労働者の就労を一定期間禁止する制裁をいいます。

出勤停止期間中は無給とされ、また、勤続年数にも参入されないのが一般的です。

出勤停止の期間としては、特段法律上の制限はありませんが、通常1週間から30日程度のものが多いとされています。

降格

懲戒処分として、役職や職位、あるいは職能資格を引き下げる処分(降格) を行うことがあります。

この場合、懲戒処分としてどのような降格を行うのか、就業規則に明示しておく必要があります。

諭旨解雇

諭旨解雇ないし諭旨退職とは、一定期間内に退職願いの提出を勧告し、提出があれば退職扱いとし、提出がない場合には懲戒解雇とする処分です。

退職とした場合には自己都合退職として、退職金がある場合には、自己都合退職金を支給する、あるいは退職金の減額規定があればそれにより一部減額して支給する例が多いと考えられます。

懲戒解雇

懲戒解雇とは、懲戒処分のうち最も重い処分であり、労働者との労働契約を一方的に解約する処分であり、通常解雇予告も予告手当の支給もせずに即時になされ、しかも退職金も全部または一部が支給されません。

解雇予告との関係でいえば、懲戒解雇も解雇の一種であるから、労働基準法20条の解雇予告手当の規定が適用され、同条1項ただし書の「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合」にあたり、予告期間を設けずに即時解雇ができます。

ただし、労働基準監督署の認定(除外認定)を事前に受ける必要があります。

懲戒処分を有効に行うには

まず、懲戒処分をなすためには、有効な懲戒規定が存在し、特定の非違行為が当該懲戒規定の懲戒事由に該当すると判断されることが必要となります。

もっとも、原則として、懲戒処分は就業規則上の懲戒事由に該当すれば、直ちに有効となるわけではありません。

懲戒処分の有効性は、懲戒処分に関する諸原則に照らして判断されることになります。

そして、懲戒処分の中でも懲戒解雇については、労働者に対して重大な影響を与えることとなるので、厳格な判断がなされることになります。

その諸原則というのが、 * ①相当性 * ②二重処罰禁止の原則 * ③不遡及の原則 の3つとなります。 以下では、この3つの諸原則について詳しく解説していきたいと思います。

懲戒規程_ページ_1

相当性について

まず、懲戒処分は、労働契約法15条において相当性が要求されており、相当性を欠く場合には、当該懲戒処分は無効となります。

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

そして、この相当性については、懲戒事由の重さと懲戒処分の重さの均衡(処分の絶対的相当性)と、他の同一または同種事案における処分例との均衡(処分の相対的相当性)のほかに、懲戒処分に至るまでの手続的相当性が問題となります。

これらの相当性は、上記15条にも明記されているように「当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして」判断されます。
つまり、個別具体的な事例に即して、実質的に判断されることになります。

処分の絶対的相当性について

懲戒処分は、企業の秩序維持を目的として、労働者に対し一方的に不利益な処分を課すものであるため、企業側が失われた企業秩序を回復すべき必要性と、労働者が懲戒処分によって被る不利益とが均衡するものでなければなりません。

つまり、例えば、遅刻等の軽微な懲戒事由については、その行為を1,2回行っていたとしても、謹慎や減給といった労働契約継続を前提とした懲戒処分が相当であり、懲戒解雇をすることは難しいということです。

もっとも、度重なる注意と懲戒処分を行ったにもかかわらず改善の余地がないと判断できる場合には、従業員不適格として普通解雇事由に該当することになるでしょう。

関連判例

七葉会事件(横浜地裁、平成10・11・17判決、労判754号22頁)

本件では、園外保育の引率中に、保母が園児2名を離脱させたとしてそれに対する懲戒処分が争われました。
園児に薬を塗っていたため、他の園児の見守りができなかった保母に対する減給処分は重きに失し無効とされ、他に気を取られて園児の見守りを怠った保母に対する7日間の出勤停止は重きに失し、減給処分が相当であると判示されました。

懲戒の量刑の基本的な考え方

では、労働契約の解消に至らない程度の懲戒事由に該当する行為に対してどの懲戒の種類を選択するのか(例えば、出勤停止にするのか減給にするのか)、どの程度の処分をするのか(出勤停止1日にするのか、2週間にするのか)という判断は、実際、実務上非常に難しいものとなります。

この点に関する基本的な考え方は、従来の懲戒に関する判例法理を条文化した前述の労契法15条の規定にあります。

同条は、使用者が懲戒権を有していることを前提に、その行使が権利濫用であるかについて、当該懲戒に関する

  • ①労働者の行為の性質
  • ②労働者の行為の様態
  • ③その他の事情

に照らして判断すると規定しています。

この中の②、③については、まさに個別事案の各態様と事情であるので、最終的には、個別事案ごとに判断することになります。

もっとも、①については、その行為の有する非行性の程度を一般化することは可能でしょう。

たとえば、業務命令違反の場合で、出張命令拒否という性質であれば、選択される懲戒の程度は譴責または減給ですが、転勤命令拒否という性質であれば懲戒解雇が選択されるといったようなことです。

さらに、刑事事犯の懲戒事由ということになれば、刑法がどのような法定刑を定めているのかを参考にすることで、行為の性質からくる基本的な懲戒の量定を決めることができると思われます。

加えて、その労働者の行為が労基法20条の即時解雇事由に該当するか否かということも懲戒の量定の参考になるといえます。

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

この解雇予告手続きの例外となる「労働者の責に帰すべき事由」について通達は、「「労働者の責に帰すべき事由」とは、労働者の故意、過失又はこれと同視すべき事由であるが、判定に当たつては、労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況等を考慮の上、総合的に判断すべきであり、「労働者の責に帰すべき事由」が法20条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質なものであり、従つて又使用者をしてかかる労働者に30日前に解雇の予告をなさしめることが当該事由と比較して均衡を失するようなものに限つて認定すべきものである」としています(昭和23・11・11基発1637号、昭和31・3・1基発111号)。  

すなわち、この即時解雇事由に該当するようであれば、当該行為の性質は、非行行為として重大又は悪質であると判断できることとなります。

そして、上記①~③の事情を考慮したものとして、懲戒の量刑の参考になると考えられるのが、人事院通知「懲戒処分の指針について」という文書です。この文書の中において処分量刑の決定についての考え方が示されているので、参考にするとよいでしょう。

もっとも、上記基準は、公務員に対する懲戒処分についてであり、民間の懲戒とは異なる要素が含まれているので、注意してください。

すなわち、「社会に与える影響」、「公務外に及ぼす影響」という要素は、民間の場合には、あくまでも企業秩序が乱れたか、企業の名誉や財産が害されたか等という要素で判断すべきと考えられます。

処分の相対的相当性(平等原則)について

懲戒処分における懲戒の種類の選択は、一定程度使用者の裁量に委ねられてはいますが、特定の事案についてのみ重く処分するということは、平等原則に反し許されないこととなります。

したがって、懲戒処分を行う際には、過去の同じようなケースの先例を調査したうえで、どのような懲戒処分を科すかを検討することが要求されます。

もっとも、非違行為を特定したうえで、今後はその非違行為については厳罰に処するということを労働者に告知し、徹底しているといった事情があるのであれば、先例にとらわれずに重い処分を科すことも可能であると考えられます。

関連判例

N社事件(東京地裁平成17・8・12判決、労経速1916号23頁)

本件は、営業部長と不倫関係にあったとされる女性社員を懲戒解雇とし、退職金を支払わなかったという事案です。
当該事案において、女性社員が解雇されたのちに退職した営業部長には退職金が全額支払われていることとの権衡や事実調査に関する不備などを理由として、女性社員に対する懲戒解雇及び退職金の不支給はいずれも無効であるとされました。

なお、従前の取り扱いを変更して、同種の行為をより重く処分したい、またはその必要性が生じた場合には、事前にそのような取り扱いの変更について十分に説明することが必要となります。

これに関連する判例で、飲酒運転した教職員は免職とするとの指針が教育委員会において発せられたので、懲戒免職としたという事案がありました。

当該事案では、「指針が制定されたことについて、個々の職員の注意を惹くような方法で周知されなければならず」というように判示されました(大阪市教育委員会事件、大阪地裁平成21・7・1判決、労判992号23頁)。

したがって、従前の取り扱いを変更したい場合には、社内報等の方法で、事前に従業員に十分な説明をすべきでしょう。

処分の手続的相当性について

懲戒処分は、使用者が労働者に対して、一方的に不利益を科すことになるので、懲戒事由該当性のような実態に関する判断のみならず、手続きについても適正に行われる必要があります。

そして、刑事手続に準じた適正手続きの要請から、懲戒処分に先立ち、原則として告知・聴聞の手続きが必要であると考えられていす。

もっとも、刑事手続における告知・聴聞の機会の付与は、憲法上の権利に基づく刑事訴訟法上の要請ですが、懲戒処分における告知・聴聞の機会の付与は、解釈上の要請に留まることになります。

したがって、告知・聴聞の機会を与えることが懲戒処分の有効要件というわけではなく、あくまでも当該処分が社会通念上相当であるかを判断する一要素であるため、懲戒対象となった非違行為の内容や調査の状況等に応じて、告知・聴聞の機会が付与されていなかったとしても懲戒処分が有効と判断された例も存在します。

関連判例

大和交通事件(大阪高裁、平成11・6・29判決、労判773号50頁)

本件では、「私企業内の懲戒手続であるとの理由のみで、これは適正手続ないし自然的正義の原則に照らし、被処分者に弁明ないし弁解の機会を与えるべきであるとの保障の枠外にあるとはいえない。」として、告知・聴聞の機会の付与が要請されることを肯定しつつ、「一般に、懲戒手続は、刑事手続とはその性質を異にし、またその目的に応じ多種多様で、懲戒処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、懲戒処分の内容、性質、その懲戒対象事実の性質、明確度等を総合較量して決定すべきものである。」として、告知・聴聞の機会を与えるかは、個別具体的に判断するとしています。

ホンダエンジニアリング事件(宇都宮地裁平成27・6・24判決)

本件は、36日間無届欠勤を継続した労働者に対する懲戒解雇が争われた事案です。
そして、弁明の機会を付与しないことをもって直ちに懲戒手続きが違法にはならないということを判示しました。

まとめ
上記裁判例では、弁明の機会を付与しないことをもって直ちに懲戒手続きが違法にはならないと判示されましたが、実務上は手続きの相当性を担保するために、可能な限り、弁明の機会を付与したのち、懲戒処分を行うことが望ましいといえます。

そして、その際は、実質的に弁明の機会を付与すべきです。

たとえば、弁明の際に、新たな説明が労働者からなされた場合には、その説明が正しいかどうか、あらためて事実関係の調査を行った上で懲戒処分を行うべきです。

二重処罰禁止の原則について

懲戒処分は、労働者の行った非違行為に対する一種の刑罰であるので、刑事罰と同様の法理に服することになります。

すなわち、刑事訴訟手続の場合と同様に、一度刑事訴追が行われた事件について、再度の訴追は許さないとする一事不再理の法理が適用されることになります。

これは、憲法39条の定める二重の危険の禁止に由来するものとなります。

そして、懲戒処分では、刑事訴訟手続と異なり、通常は懲戒処分に向けた手続的負担が発生しないため、一事不再理の法理は、一度懲戒処分が確定した事実について、再度の懲戒処分は許されないとする、二重処罰禁止の原則として表れることになります。

つまり、軽い懲戒処分を科した後に重い懲戒処分を科す場合には、二重処罰禁止の原則の観点から、最初の軽い懲戒処分の対象とした非違行為は、後の重い懲戒処分の対象とすることができないということになります。

もっとも、最初の処分が懲戒処分にはあたらない注意や警告である場合には、それらの対象となった非違行為も含めて重い懲戒処分を科す理由とすることは可能となります。

関連判例

渡島信用金庫事件(札幌高裁、平成13・11・21判決労判823号31頁)

本件は、職員が、書類の取り扱い上の過失によって不明金を発生させ、その報告を遅延した上に虚偽の内容を述べたという理由により、懲戒解雇処分とされ、さらに、同時期において不明金と近似した金額の金員を着服したことにより重ねて懲戒解雇処分とされたという事案です。
そして、後の懲戒処分は先行する懲戒処分と社会的同一性ないし関連があるとされ、後の懲戒処分は二重処分にあたり無効と判示されました。

不遡及の原則について

まず、懲戒権行使に関しては、最高裁判決により、その理由となる事由と、それに対する懲戒の種別が就業規則上明記されている必要があると判示されています(フジ興産事件、最二小判平成15・10・10労判861-5)。

これは、解説3でも述べた通り、懲戒処分が刑事罰と同様の法理に服することの現れであり、刑法の「罪刑法定主義」と同様の意味を有することになります。

罪刑法定主義とは、どのような行為が犯罪となるのか、そしてその犯罪に対してどのような刑が科されるかについて、あらかじめ法によって定めておかなければならないという原則のことです。

そして、この「罪刑法定主義」という原則の派生原理が「不遡及の原則」であり、就業規則において設けられている根拠規定は、当該規定が定められる以前の事案に対してさかのぼって適用してはならないということを意味します。

関連判例
富士タクシー事件(新潟地判平成7・8・15労判700-90)

本件は、1年9か月の間に乗客から5回の苦情があったタクシー運転手に対して、接客不良、乗車拒否等を理由として行った懲戒解雇の効力が争われた事案です。
当事件において、裁判所は、懲戒解雇直後に策定された就業規則の懲戒事由を解雇理由として追加した点について「事後に策定された規定をもって懲戒処分の根拠規定とすることが許されないことは、論をまたない」と判示しました。

まとめ

☆チェックシート☆

  • ☑前提として、認定された非違行為が、懲戒事由に該当しているといえるのか。
    ポイント
    ①懲戒処分の対象となる非違行為が証拠上認定できるか。
    ②認定された非違行為が、実質的に懲戒事由に該当しているといえるか。

  • ☑懲戒の種類の選択 ポイント
    ①非違行為と選択された懲戒の種類とが均衡しているのか。
    ②選択された懲戒の種類は、当社における従来の処分例との関係で均衡しているといえるのか。

  • ☑懲戒処分の手続きは相当といえるのか ポイント
    ①告知・聴聞の手続きは与えられていたのか。
    ②二重処罰禁止の原則に抵触しないか。

  • ☑不遡及の原則の関係
    ポイント
    当該事案との関係で、懲戒処分の根拠規定をさかのぼって適用しているということがないか。