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【法務担当者必見!】改正民法対応 業務委託契約のチェックポイント② ※条項例ひな形付

Q.取引先との間で業務委託契約書を作成することになりました。業務委託契約書作成にあたり、チェックポイントを教えてください。

A.業務委託契約は、自己(自社)の業務を外部に委託するための契約です。特に、企業が行う経済活動においては、広く様々な目的に使う契約形態です。
 自己(自社)の業務を外部に委託するのですから、業務委託契約においては、外部の受任者が適正に業務を行うように委託者が管理できるかどうかが契約内容上のキーポイントとなります。
また、委託する業務の内容・報酬といった基本的な条件を明確にすることが重要です。加えて、委託業務によって制作された納品物に関する知的財産権の取扱いや、損害賠償に関する規定に注意が必要です。
 委託者か受託者の立場によって、規定の有利不利が変わる部分もあるので、どちらの立場に立って業務契約書をチェックするかもポイントとなります。

危険負担

危険負担とは

例文

第○条(危険負担)
本件○○の甲への納品前に、甲の責めに帰さない事由により、本件○○に生じた滅失、毀損及び変質等の損害は、乙の負担とする。

この条項は、請負型業務委託の場合に、契約当事者の帰責事由(責められるべき理由や落ち度、過失のこと)がなく成果物が滅失、毀損等の状態になった場合の処理を定めています。

民法上、請負契約においては、委託者の責めに帰さない事由により成果物が毀損又は滅失した場合であっても、委託者の費用と負担で対処することになります。

この点は、原則として特定物に関する売買契約の成立時点で、買主に危険が移転するとされている売買契約の処理と異なり、不合理な結果となるおそれは低いといえます。

もっとも、開発委託契約であっても、あらかじめ一定の規格で統一された成果物を譲渡する場合には、売買契約の性格を有することになります。 そのため、開発委託契約書にも、念のため危険負担条項を設けておいた方がよいでしょう。

委託者の立場の場合

委託者としては、できる限り遅い段階で危険が委託者に移転するとすれば、それだけで有利になります。

例えば、以下のように代金完済時に委託者に危険が移転するようにしておけば、委託者に有利になります。

第○条(危険負担)
本件○○の委託料完済前に、甲の責めに帰さない事由により、本件○○に生じた滅失、毀損及び変質等の損害は、乙の負担とする。

受託者の立場の場合

受託者としては、早い段階から危険が委託者に移転すれば、それだけ有利になります。

そのため、以下のように業務委託契約締結後に委託者に危険が移転することを明確にしておけば、受託者に有利になります。

第○条(危険負担)
本契約締結後に、甲の責めに帰さない事由により、本件○○に生じた滅失、毀損及び変質等の損害は、甲の負担とする。

民法上また判例上、請負契約においては、委託者(注文者)の責めに帰さない事由により成果物が毀損又は滅失した場合であっても、受託者(請負人)の費用と負担で対処することになります。

しかし、上記の定めを設けることで、受託者(請負人)の利益は保護されることになるでしょう。

品質保証期間

例文

第○条(品質保証期間)
乙(受託者)は、甲(委託者)に対して、本件ソフトにつき、納品日から○年間、仕様書どおりの品質性能を有することを保証し、甲の過失によらない故障につき無償で修理を行う。

成果物をもたらすことを目的とする請負型の業務委託の場合、納品された成果物に故障等がある場合も想定されます。

委託者としては、通常、そのような故障等に対処できません。

そのため、一定の期間については、受託者に仕様書どおりの品質保証を行ってもらう必要があります。

知的財産権

知的財産権規定の意義

例文

第○条(知的財産権)
1 乙が本件業務遂行過程で行われた発明、考案等(ビジネスモデルの構築を含む。)、又は作成された○○○○その他の成果物から生じた特許権、実用新案権、意匠権、著作権等(特許権、実用新案権を受ける権利を含む。)については、全て委託料の完済とともに甲に移転する。
2 前項にかかわらず、同種の○○○○に共通に利用されるノウハウ、ルーチン、モジュール等に関する権利は、甲に移転せず、乙に留保される。
3 本件○○○○につき、乙に著作者人格権が発生する場合、乙は同権利を行使しない。

この条項は、委託業務の際に生じる著作権等の知的財産権の帰属について定めています。

例えば、ソフトウェア開発委託契約の場合、原則としてソフトの著作権等は作成者である受託者が有することになります。

しかし、委託者としては、自ら費用をかけてソフトを開発したのですから、受託者が作成したソフトを委託者以外の第三者に無断で売却することを防ぎたいと考えることもあるでしょう。

そのような場合には、委託料の完済等を条件として、ソフト等の成果物について発生する著作権等の知的財産権が受託者から委託者に移転すると定めておく必要があります。

一方で、受託者としては、ソフトの開発において類似のノウハウやルーチン等を用いることが多くあります。これらのノウハウやルーチン等を使用できなくとなると、今後のソフトウェア開発が不可能になりかねません。

そのため、これらに関する権利については、委託者に移転されないと明記しておくべきでしょう。

委託者の立場の場合

委託者としては、ソフトの著作権等の知的財産権をできる限り早い段階で譲り受けることができれば、それだけ有利になります。

具体的には、以下のように移転時期を納品時とすることが考えられます。

第○条(知的財産権)
1 乙が本件業務遂行過程で行われた発明、考案等(ビジネスモデルの構築を含む)、又は作成されたプログラムその他の成果物から生じた特許権、実用新案権、意匠権、著作権等(特許、実用新案権を受ける権利を含む)については、全て本件ソフトの納品とともに甲に移転する。
2 (略)
3 (略)

受託者の立場の場合

受託者としては、ソフトの著作権等の知的財産権を保有することになれば、そのソフトを第三者に売却することにより、更なる利益を得ることができます。

そのため、以下のように知的財産権が受託者に帰属すると定めておけば、受託者に有利になります。

この条項は、トラブル防止のため、委託者と十分協議したうえ規定する必要があるでしょう。

第○条(知的財産権)
乙が本件業務遂行過程で行われた発明、考案等(ビジネスモデルの構築を含む)、又は作成されたプログラムその他の成果物から生じた特許権、実用新案権、意匠権、著作権等(特許、実用新案権を受ける権利を含む)については、全て乙に帰属する。

損害賠償

損害賠償規定の意義

例文

第○条(損害賠償責任)
甲又は乙は、解除、解約又は本契約に違反することにより、相手方に損害を与えたときは、その損害の全て(弁護士費用及びその他の実費を含むが、これに限られない。)を賠償しなければならない。

当事者の一方に故意過失が存在し、相手方に損害を生じさせたときに、その損害を賠償しなければならないことは当然のことであり、契約書で規定しなくても民法により損害賠償請求を行うことができます(民法415条、709条)。

もっとも、誰もが法律に詳しいわけではないため、あえて契約書上に損害賠償の規定を設けておくことにより、契約の不履行を防止する効果は期待できます。

また、具体的に賠償額を定めておく、すなわち賠償額の予定を行うのであれば、その規定を設けることにより新たな法的意味を見出すことができます。

委託者の立場の場合

委託者が業務委託契約に基づき負っている債務は、報酬を支払うという金銭債務です。

そして、仮に委託者が報酬の支払いを怠った場合でも、損害賠償の遅延損害金額は法定利率または契約で約束した利率(約定利率)により定まります。

むしろ、受託者に損害賠償を請求する場合のことを考慮すると、損害賠償の範囲を広げておくことが委託者には有利となることが多いです。

受託者の立場の場合

受託者が負っている債務に不履行があった場合、例えば委託している業務が期限どおりに完成しなかった場合には、ビジネス上の損失を含め、委託者にはさまざまな損害が発生する可能性があります。

そこで、受託者としては、委託者からの損害賠償の請求を受けた場合に備えて、以下のように、なるべく責任を負う損害賠償の範囲を制限するとともに、無制限に損害賠償の額が膨らむことのないよう上限額を設けておくことが考えられます。

損害賠償額を限定する場合

例文
甲又は乙は、解除、解約又は本契約に違反することにより、相手方に損害を与えたときは、違反行為があった月の前月の委託料(消費税込)の20%を上限として、その損害を賠償しなければならない。

損害賠償責任を重大な違反の場合に限定する場合

例文
甲又は乙は、解除、解約又は本契約に違反することにより、相手方に損害を与えたときは、故意又は重過失がある場合に限り、その損害の全て(弁護士費用及びその他の実費を含むが、これに限られない。)を賠償しなければならない。

遅延損害金

例文

第○条(遅延損害金)
甲が本契約に基づく金銭債務の支払いを遅延したときは、乙に対し、支払期日の翌日から支払済みに至るまで、年14.6%(年365日日割計算)の割合による遅延損害金を支払うものとする。

この条項は、債務の支払いを遅延した場合のペナルティーについて定めています。

遅延損害金利率の定めがないときの利率は、法定利率によるとされています。

民法改正により、法定利率が年5%から年3%(その後3年ごとに見直しが行われます)となり(民法404条)、遅延損害金利率もこれに連動します(民法419条)。

また、同改正により、商事法定利率(6%)は廃止されます。

当事者間で、法定利率と異なる利率を定めることも可能です。

改正民法により、法定利率は3年ごとに見直される変動制となることから、遅延損害金利率について定めを置くことが、より重要となります。

その際に用いられる利率として、消費者契約法9条2号に規定される上限利率である、年14.6%が多くみられます。

消費者契約法9条 (消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分 二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

その他の留意点

偽装請負

形式的には請負型の委託契約としているが、実態としては労働者の派遣または供給であって、受託者の従業員が委託者の指揮命令下に移るような場合「偽装請負」といい、職業安定法等に違反して違法となります。

特に、受託者の従業員が長期的に委託者のオフィスで業務を行うといった場合には、偽装請負と判断されないように注意する必要があります。

厚生労働省が発表する「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」の要件を満たさなければ、形の上で請負契約となっていても労働者派遣契約として扱われる可能性が高いです。

その内容を要約すると、注文主と労働者との間に指揮命令関係がある場合には、請負契約の契約により行われていても労働者派遣法の適用を受けます。

ところが、この区分を実際に判断するのは必ずしも容易ではないので、判断基準として、上記基準が作られました。

請負の形式による契約に基づいても、労働者派遣と判断される場合には、労働基準法などの適用につき派遣労働者を受け入れたと同様の責任分担となる点に注意が必要です。

下請法の適用

業務委託契約が、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の適用を受ける場合があります。

下請法は、わずか12条と短い法律ながら、公正取引委員会で所管する、日本で横行していた下請事業者いじめを取り締まるための重要な法律です。

仕事を委託する親事業者は、下請事業者よりも優位な立場にあることから、しばしば下請代金の支払いを遅らせたり、代金を不当に引き下げたり、下請事業者が不利な扱いを受けることがあります。

下請法の適用を受けると、親事業者には、発注書面の交付義務(下請法3条)、書類の作成・保管義務(同法5条)、下請代金の支払期日を定める義務(同法2条の2)、遅延利息の支払義務(同法4条の2)の4つの義務が生じます。

そして、下請代金の支払遅延の禁止や返品の禁止など11の行為が禁止されます(同法4条各項参照)。

義務違反は50万円以下の罰金(同法10条)、禁止行為を行った場合は適当な措置をとるべきことが求められたり(同法6条)、下請事業者が被った不利益の原状回復措置の勧告を受けることになります(同法7条)。

個々の業務委託契約において、下請法の適用を受けるのか、受ける場合に法の要請に従っているのかをしっかり検討すべきでしょう。

まとめ

以上のように、業務委託契約は複数の類型に分類されるうえ、検討すべき項目も多岐に渡ります。
委託者か受任者かのいずれの立場に立つかを確認し、最低限、以下の点をチェックしましょう。

【委任型業務委託契約の場合】

委託者の立場の場合

  • 契約の目的が明確か
  • 委託業務の内容が明らかであるか、委託業務の内容に漏れがないか
  • 委託業務に付随事項が記載されているか
  • 委託料、実費の負担割合は明確に定められているか
  • (委託料が時給制の場合など)定期的な報告義務が規定されているか
  • (委託料が成功報酬制の場合)委託料の計算方法・支払方法が特定されているか
  • 契約の有効期間は明らかであるか

受託者の立場の場合

  • 契約の目的が明確か
  • 受託業務の内容が明らかであるか
  • 受託業務の付随事項の範囲は明確か
  • 委託料、実費の負担割合は明確に定められているか
  • (委託料が時給制の場合など)定期的な報告義務は明確であるか
  • (委託料が成功報酬制の場合)委託料の計算方法・支払方法が特定されているか
  • 委託者が委託料を支払わなかった場合の対応に問題はないか
  • 契約の有効期間は明らかであるか

【請負型業務委託契約の場合】

委託者の立場の場合

  • 契約の目的が明確か
  • 委託業務の内容が明らかであるか、納期が定められているか
  • 検査方法と検査期間は明記されているか
  • 委託料、実費の負担割合は明確に定められているか
  • 守秘義務について、その範囲が明記されているか
  • 品質保証期間(契約不適合が見つかった場合の対応)が記載されているか
  • 所有権、著作権の帰属は明確か

受託者の立場の場合

  • 契約の目的が明確か
  • 受託業務の内容が明らかであるか
  • 納期に無理はないか
  • 検査方法と検査期間は明記されているか
  • 委託料、実費の負担割合は明確に定められているか
  • 委託者が委託料を支払わなかった場合の対応に問題はないか
  • 守秘義務について、その範囲が明記されているか
  • 品質保証期間が不当に長くないか
  • 所有権、著作権の帰属は明確か