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【法務担当者必見!】改正民法対応 業務委託契約のチェックポイント① ※条項例ひな形付

Q.取引先との間で業務委託契約書を作成することになりました。業務委託契約書作成にあたり、チェックポイントを教えてください。

A.業務委託契約は、自己(自社)の業務を外部に委託するための契約です。特に、企業が行う経済活動においては、広く様々な目的に使う契約形態です。
 自己(自社)の業務を外部に委託するのですから、業務委託契約においては、外部の受任者が適正に業務を行うように委託者が管理できるかどうかが契約内容上のキーポイントとなります。
また、委託する業務の内容・報酬といった基本的な条件を明確にすることが重要です。加えて、委託業務によって制作された納品物に関する知的財産権の取扱いや、損害賠償に関する規定に注意が必要です。
 委託者か受託者の立場によって、規定の有利不利が変わる部分もあるので、立場にポイントです。

業務委託契約の種類~請負契約型と委任契約型~

業務委託契約は、企業が行う業務を外部の第三者に委託するための契約であり、その対象とする「委託業務」の内容が多様なために、極めてバラエティに富みます。

加えて、業務委託契約は、その法的性質により、委任(準委任)契約型(「委任型業務委託」といいます)請負契約型(「請負型業務委託」といいます)に分かれます。

内容的には、業務委託契約が仕事の完成を目的とするかどうかで分類することができます。仕事の完成を目的とする場合には、請負型業務委託となり、仕事の完成を目的としない場合の多くは委任型業務委託に分類できます。

請負型業務委託の場合、その法的性質は民法第632条に定める請負契約となりますので、受託者である業務請負人は、仕事を完成させなければなりませんし、成果物に対しての責任も負います。欠陥やミスが発覚した場合、委託者から修正を求められるだけでなく、場合によっては損害賠償を請求されるケースもあることを理解しておかなくてはなりません。

他方で、委任型業務委託の場合、その法的性質は民法634条に定める委任契約となりますので、請負契約と異なり受託者は、成果物に対しての責任は発生しません。委託者からの業務を遂行したけれど行為の遂行によって生じた成果物の質や結果には責任を持たなくてよいという点が、委任契約の大きな特徴です。

ただし、実際には、準委任型と請負型を明確に区別することは困難で、両者の混合型も多いです。

働き方の違い~雇用契約、派遣契約との違い~

雇用契約

「雇用契約」とは、労働者が労働を提供し、会社がその報酬を与えることを約束する労働契約です。つまり、会社の従業員となって働く雇用形態を意味します。

「労働者」にあたる場合は、原則として、労働基準法や労働契約法上の保護を受けることになり、この点が業務委託契約との大きな違いとなります。

派遣契約

「派遣契約」とは、派遣会社と労働者が雇用契約を結んでおり、派遣先の企業で労働する契約です。

正社員や契約社員は働く企業と直接雇用契約を結びますが、人材派遣の場合は「派遣会社」と「派遣先企業」、二つの会社が登場するのが特徴です。

派遣社員にとって、派遣会社は雇用契約を結ぶ雇用主、派遣先企業は実際に仕事をする勤務先となります。

業務委託契約

「業務委託契約」とは、自社の業務を外部に委託する契約です。

業務委託契約では、雇用契約と異なり業務を委託する企業(委託者)から引き受ける側(受託者)への指揮命令権は発生しません。

収入印紙

収入印紙とは、租税の支払いや行政に対する手数料の支払いに利用される証票です。

収入印紙は印紙税のほか、 手数料、科料、訴訟費用、罰金、登録税などの徴収にも使用されています。収入印紙は、納税義務のある者が事前に郵便局や市役所、印紙売りさばき所などで購入するもので、会社においては資産に計上できます。

請負契約に分類される場合

請負契約書は、印紙税法上の第2号文書(請負に関する契約書)に該当し、以下のとおり契約金額に応じて収入印紙を貼付しなければなりません。
なお、建設業法上の建築工事については、一定の軽減措置が図られることがあります。

収入印紙

記載された金額 収入印紙額
1万円以下 非課税
1万円以上100万円以下 200円
100万円を超え200万円以下 400円
200万円を超え300万円以下 1千円
300万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
5千万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円
5億円を超え10億円以下 20万円
10億円を超え50億円以下 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

委任契約(準委任契約)に分類される場合

業務委託契約のうち、委任契約(準委任契約)に該当するものは非課税文書であるため、収入印紙は不要です。

もっとも、業務委託契約書という名称であっても、請負契約の内実(仕事の完成)を有するものについては、収入印紙が必要となりますので、注意が必要です。

業務委託料と源泉徴収

源泉徴収とは、給与・報酬・利子・配当・使用料等の支払者が、それらを支払う際に所得税等の税金を差し引き、それを国等に納付する制度です。

また源泉徴収された税金のことを源泉徴収税と呼んでおり、源泉徴収を行う必要がある報酬・料金などの範囲は、支払いを受ける対象者が個人か、法人か、源泉徴収の対象となる取引なのか、などによって異なります。

源泉徴収の対象とされる報酬・料金は、所得税法第204条によってその項目が規定されています。

その範囲は、支払いを受ける者が個人である場合、
① 原稿料や講演料など
ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
② 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
③ 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
④ プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
⑤ 映画、演劇、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
⑥ ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
⑦ プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
⑧ 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

といった8種類に分類されています。また報酬・料金の支払いを受ける者が法人の場合は、馬主である法人に支払う競馬の賞金が該当します。

目的

例文

第○条(目的)
甲は、自社の●●事業に関する業務効率を改善するため、乙に対して〇○業務を委託することとし、乙がこれを承諾したため、本契約を締結する。

民法の改正(平成29年法律第44号)により、解除を主張したり、契約不適合責任に基づく請求をしたりする場合に、契約の目的が重要視されることになりました。

そのため、契約書に契約の目的を記載しておく必要があります。

委託業務の内容

例文

第○条(委託業務)
甲は、乙に対して、以下の業務(以下「本件業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。
(1) ○○○○
(2) ○○○○
(3) これらに付随する一切の業務

業務委託契約においては、当初予想していた業務以外の、付随的な業務が発生することが往々にしてあります。 そこで、委託業務を定める際には、最後に「これらに付随する一切の業務」という包括的な規定を加えておくとよいでしょう。

また、委託する業務については、できる限り詳細に取決めを行っておくべきです。 詳細に取決めをしないと、契約した委託料の範囲内の業務なのか、それとも別途委託料を支払ってもらえる業務(契約外の業務)なのかトラブルが生じる原因となります。
場合によっては、以下のように、「委託業務は別紙のとおり」として、委託業務の詳細を記した別紙を本契約書に添付するという方法で特定してもよいでしょう。

例文

第○条(委託業務)
甲は、乙に対して、別紙記載の業務及びこれらに付随する一切の業務(以下「本件業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。

別紙

(1) ○○○に関する業務
(2) ○○○に関する業務
(3) ○○○に関する業務

さらに、委託業務を変更しなければならなくなった場合に備えて、以下のように、変更方法について規定しておくと安心です。

第○条(委託業務)
1 (略)
2 本契約締結後に経済情勢等に大幅な変更が生じた場合は、本契約で定めた委託業務の内容につき甲及び乙で協議のうえ、変更契約の書面を作成して変更することができる。

委託料

通常時の委託料

例文

第○条(委託料等)
1 本契約の委託料は、月額金○○円(消費税込)とする。
2 甲は、乙に対し、翌月末日までに当月の委託料を下記振込口座に振り込んで支払う(振込手数料は甲負担)。
○○銀行○○支店 普通預金
口座番号 ○○○○○○
口座名義 ○○○○○○
3 本件業務の遂行に必要な交通費、宿泊費は甲が負担し、その他本件業務の遂行に通常発生する実費は乙が負担するものとする。

委託料の規定は、受託者の最大の関心事です。そのため、消費税や振込手数料も含めて曖昧な点を残さず、全て明確に契約書に記載しておきましょう。
上記の例では、月額固定の委託料としましたが、実際の業務委託契約においては、時給制や成功報酬制など、様々な取決めがなされることが想定されます。

成功報酬制の記載例としては、以下のようなものが考えられます。 1つ成功するごとに一定額の報酬が支払われる契約形態の場合、締め日(委託料を算定する基準日)と支払日を設ける必要があります。

第○条(委託料)
1 本契約の委託料は、〇○するごとに金○万円とする。
2 甲は、乙に対し、翌月末日までに当月の委託料を下記振込口座に振り込んで支払う(振込手数料は甲負担)。
○○銀行○○支店 普通預金
口座番号 ○○○○○○
口座名義 ○○○○○○

途中終了時の委託料

例文

第○条(途中終了時の委託料)
本契約が解除その他の事由により途中で終了したときは、甲は乙に対して、終了までになされた履行割合に応じた額の委託料を支払うものとする。

現行民法においては、委任が受任者に帰責事由(責められるべき理由や落ち度、過失のこと)のない場合において履行の中途で終了したときは、受任者はすでにした履行の割合に応じて報酬を請求することができる旨が規定されています。
一方、受任者に帰責事由がある場合には、割合報酬を請求することはできませんでした。

しかし、受任者に帰責事由がある場合でも、一部でも履行された委任事務があるのであれば、当該部分についてはすでにした履行の割合に応じて報酬を認めるのが合理的といえます。
そこで、改正民法においては、受任者の帰責事由の有無を問わず、すでに履行の割合に応じて報酬を請求することが認められることとなりました。

なお、委任が履行の中途で終了した場合における、各当事者の帰責事由の有無による報酬請求権の存否は以下のとおりとなります。

帰責事由の有無による報酬請求権の存否

帰責事由の存否 現行民法 改正民法
委任者に帰責事由あり 報酬全額の請求可能(現行536条2項) 報酬全額の請求可能(改正民法536条2項)
受任者に帰責事由あり 割合報酬請求不可能(現行648条3項) 割合報酬請求可能(改正648条3項)
双方に帰責事由なし 割合報酬請求可能(現行648条3項) 割合報酬請求可能(改正648条3項)

報告

報告規定の意義

例文

第○条(報告)
1 乙は、甲に対し、甲所定のフォームに従い、業務従事者及び業務時間等を記入したうえ、営業日終了後毎日、甲宛てに電子メールにより送信しなければならない。
2 乙は、本件業務の履行の状況に関して、甲からの請求があったときには、その状況につき直ちに報告しなければならない。

委託者は、受託者が適切に委託業務を行っているのか常に配慮しなければなりません。これは、業務の成果にかかわらず、一定額の委託料を支払う契約形態の場合に強く求められます。

成功報酬制の契約形態をとっている場合には、さほど受託者の業務遂行過程につき目を光らせる必要はありません。しかし、この場合でも委託者の名称を勝手に用い、委託者の信用を害するような強引な業務遂行を行うことも考えられます。

そのため、委託者としては、できる限り受託者の業務遂行状況を把握できるようにしておくべきでしょう。

委託者の立場の場合

報告規定は、委託者が受託者の業務遂行状況を把握するという、委託者の利益を図るための規定です。

そのため、委託者としては、できる限り頻繁に受託者から報告を受ける体制を整えておくべきでしょう。

具体的には、本契約書例のように、委託者の請求に応じて受託者が行うこととともに、定期的に受託者から報告がなされるようにしておくべきです。

受託者の立場の場合

報告規定は委託者のために設けられ、受託者としては、報告を行うたびに時間と手間を要することになります。

そのため、受託者としては、報告規定を削除できるのであれば、その分報告を行う負担が減るため、有利になります。

もっとも、業務委託契約が委任契約の性格を帯びている場合には、報告規定を削除しても、受託者には民法により報告義務が課されています(民法645条)。

そこで、以下のように報告義務を負わないと規定することにより、民法による報告義務を負わないようにすることもできます。

例文

第○条(報告)
乙は、甲に対して、一切の報告義務を負わない。

再委託

再委託禁止規定の意義

例文

第○条(再委託)
乙は、本件業務の全部又は一部を第三者に対し再委託することはできない。ただし、甲が書面による再委託の許可を事前にした場合はこの限りでない。

業務委託契約は、通常、受託者の業務遂行能力を信頼して契約されるものです。
ところが、受託者が委託業務を第三者に再委託した場合、委託者としては、当初予定していた業務遂行の満足を得られない可能性があります。また、受託者を十分監視することができなくなってしまうおそれもあります。
そのため、受託者に責任を持って委託業務を遂行してもらうという委託者の期待を保護するために、再委託禁止条項を定めておく必要があります。

このように、再委託禁止条項は、委託者の保護を目的としているので、委託業務を誰が行っても構わないときにはこの条項を設ける必要はありません。

ただし、再委託する場合の責任の所在について記載する場合は、以下のようになります。

1 (略)
2 前項ただし書きにより再委託が可能となる場合であっても、乙は、再受託者に対して本契約における乙の義務と同様の義務を遵守させ、その行為について一切の責任を負う。

また、個人情報保護法22条では、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合には「委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない」と定めていますので、再委託の可否を判断するにあたっては、個人情報保護法も意識されるとよいでしょう。

受託者の立場の場合

上記のとおり、再委託禁止条項は、委託者を保護する規定です。

その一方で、受託者としては、自由に再委託ができなくなれば、受託者自身が委託業務を処理するだけの人員を自社に抱えなければならないという負担を強いられます。

そのため、受託者としては、再委託禁止条項を削除することができれば、それに越したことはありません。

しかし、削除できないにしても、以下のように一定の場合には再委託をすることができるとしておけば、受託者の業務遂行の円滑化が図れるでしょう。

第○条(再委託禁止)
乙は、本件業務を再委託することにつき、甲の定めた期限を遵守するためなど正当な理由がある場合に限り、本件業務の全部又は一部を第三者に再委託することができる。

検査

例文

第○条(検査)
1 甲は、本件○○の納品後、○日以内に本件○○を検査し、乙に対して合格又は不合格の通知をしなければならない。
2 甲は、前項の検査により本件○○につき瑕疵等を発見したときは、直ちに乙の不合格の通知をしなければならない。本通知がなされないまま前項の期間が経過したときは、本件○○が検査に合格したものとみなす。
3 乙は、検査の結果、不合格とされた場合、本件○○に必要な修正を行い、甲乙別途協議して定める期限までに再度納品することとする。この場合、納期延長による甲の乙に対する損害賠償の請求を妨げない。

物の製造やシステム開発を委託する場合のように、受託者が一定の成果物を作成することを業務内容としている場合には、その納品された成果物についての検査と瑕疵が発見された場合の対処を定めるべきです。

受託者である場合には、みなし合格の規定(委託者が検収期間内に合否の通知をしない場合など、一定の場合には検収に合格したものとみなす規定)も設けておいた方が安全です。

成果物の所有権

所有権規定の意義

例文

第○条
本件○○の所有権は、本件○○の委託料完済時に、乙から甲に移転する。

この条項は、請負型業務委託の場合の成果物の所有権の移転時期について定めています。

解釈上、成果物の所有権は、原則として納品(引渡し)のときに、受託者から委託者へ移転するとされています。

しかしながら、成果物の納品後であっても委託料が完済されるまで、受託者は成果物の所有権を保有し続けたいと考えることもあるでしょう。その場合には、上記のような条項を記載しておく必要があります。

委託者の立場の場合

委託者としては、できる限り早い段階でソフトの所有権を取得した方が有利になります。
成果物が完成した時点(納品前)で所有権の移転を行う場合には、以下のような条項となります。

第○条(所有権)
本件○○の所有権は、本件○○の完成時に、乙から甲に移転する。

受託者の立場の場合

受託者としては、できる限り遅い段階まで成果物の所有権を保持していた方が有利となります。
委託料完済時に所有権移転が行われるとする9-1の例は、受託者に有利な条項としています。